2001年3月20日
昨年末にDornbirn(オーストリア)で開催された、第40回国際化繊会議(the 40th International Man-Made Fibres Congress)での発表事例等より、自動車用資材の市場や開発動向についての話題を抜粋して紹介する。
欧州では、昨年1年間で約1,500万台(世界全体で4,000万台)の新車が生産され、約4.5万トンのポリエステルテキスタイルが使用された。
欧州のシートカバーは92%がポリエステルであり、圧倒的なシェアを持つ。これは、ポリエステルがこの用途に適した性能をもち、かつ高い耐光堅牢度があることによる。テキスタイルの種別には、織物が全体の60%を占め、以下、丸編が20%、経編が15%、ラッシェル製品及びパイル織物が5%程度となっている。
自動車用関係の主な市場は、シートカバー以外にカーペット、天井材、トランクライニングなどであるが、この他、複合材としても使用されている。
EUでは、自動車リサイクル規格(EU End of Vehicle Life Directive)が定められ、「2006年からは少なくとも車輌重量の85%以上をリサイクル可能な設計とし、さらに、2015年迄に95%以上に強化する」旨の指導が行われている。関連メーカーではこれを背景に、易リサイクル設計など様々な検討を開始している。
Audi(独)は、カーシートのパッドをリサイクルが難しいウレタンフォームから、リサイクル可能な材料に代替するため、Caliwebと共同プロジェクトを開始した。既存のウレタンフォームと比較して、新しいパッドは弾性回復や汗の吸収性など、シートとしての快適性が改善されなければならない。Caliwebの高配向繊維を高密度化した不織布は、良好な回復性があると評価されている。
また低煙と耐光堅牢度の要求(DIN75220)に対応するため、フレイム・ボンディング法はホット・メルト・パウダーによる接着法に置き換わって行くことが予想される。その他、製品はそのままの状態で完全に、リサイクルできるよう、100%ポリエステルで設計されることが望ましい。
上記EUリサイクル規格をクリアするための最もシンプルな方法は、個々の車の部品がリサイクル可能な単一素材で製造されることを確保することである。
EMS(スイス)は、ポリエステル不織布のサーマルボンド・フリースを開発した。この材料は、シートフォームを代替し、ポリエステル製のシートカバーとポリエステル系ホットメルトで接着される。良好な通気性と水分浸透性、快適性、着用性及びケミカルリサイクルが可能であることをPRする。
帝人は、多様な熱接着素材として、ELKと呼ばれる特殊複合構造でリサイクル可能なポリエステルを開発した。この素材は、ウレタンフォームのようなハニカム構造を構成することができ、かつ、ウレタンフォームより30%軽い。加圧耐久性、通気性が良好で、燃焼時の有害ガスの発生も極めて少ない。
RieterのUltra Light Weight systemは、騒音吸収を第一の目的として開発された。車輌重量で1台当り5〜23kg(17%〜60%)軽量化できる。この材料は、新しい特許技術である、多層複合構造サウンドコントロール技術をベースに、小さな厚みで、高レベルな音の吸収を実現した。100%再生繊維が使用されており、しかも、単一素材で構成されることからリサイクルが可能である。
BMWの11399.0(自動車のリサイクルに関する自社規格)は、EUリサイクル規格の施行を前に、課題が設定されている。一例として、異種ポリマーがコーティングされていてリサイクルが難しい材料を代替できる、リサイクル可能な成型基布材の開発があげられる。
「カーシートでの素材選択で、原着と糸染めのどちらを選ぶべきか」との質問が多くある。原着糸のサプライヤーであるSetila(スイス)は、シートカバーについて広範囲なLCA(ライフサイクルアセスメント)を実施し、その検討結果を示した。
その結果によれば、1バッチが1〜3トンの場合は糸染めが好ましいが、1バッチが4〜50トンの場合は、原着が経済的かつ再生可能であることも含めて好ましいとしている。
環境面においては、原着は糸染めの場合のように水を使用せず、工場排水の排出がないことから、原着の方が環境に優しいとしている。一方、糸染めは、オリゴマー残留等の問題を解決できるが、原着の場合はこの問題が残るとしている。
Acordisは、原着と糸染めの黒色シートベルトでの耐光堅牢度の比較検討を行った。Fakra法(4×,紫外線暴露)での試験によれば、原着のシートベルトの方が、糸染めのシートベルトより耐光堅牢度が優れているとの結果であった。
Honeywell Performance Fibres(仏)は、ポリエステル/ポリカプロラクトン(PCL)のコポリマー技術に関する特許をベースに、新しい安全性素材を開発した。この素材を使用したシートベルトは、既存のポリエステル製シートベルトと同等の性能を示しながら、3倍以上の衝撃吸収性があり、ドライバーの安全性が一層向上した。ベルト表面にはコーティングが施され、事故時のベルト装着によるスリ傷等人体損傷の軽減や、耐紫外線性が改良されている。
繊維補強複合材料は、スチールやアルミなどの金属材料よりも軽く、且つ、それらよりはるかに高いエネルギー吸収性能をもつことが知られている。しかしながら、現状として繊維補強複合材料は既存の材料と比べて非常に高価であり、量の拡大を図るには、コスト面のブレークスルーが必要とされる。
経済性を改善するための1つの方法として、二次加工の要求を予め整理・統合した上で半成型品的なテキスタイル(編立て品、組立て品等)を準備しておき、ユーザーからの要求に応じて樹脂加工等をオーダーメイドで行えるような体制の構築が考えられる。
繊維補強複合材料が低コストとなり、車輌用途でも広く使用できるようになれば、車輌重量を低下(燃費の向上)させ、且つ、その高いエネルギー吸収性により、安全性を向上させることができる可能性がある。
最近のエアーバッグの世界全体での需要量は2.5億uであるが、2008年には3.8億uに拡大するものと予測される。運転席や助手席以外に、サイド・インパクトやヘッド・プロテクションなど、新しい部位にエアーバッグが装備されるようになるためである。
(担当:技術グループ 大松沢)