よくわかる化学せんい

高機能化学繊維素材

  2.主要な化学繊維機能性素材の評価方法の概要  

 各素材特性に関する公的基準や業界などで統一基準が制定されている場合の評価方法と基準の概要を紹介します。


 a.水分特性
(1)吸湿素材
「JIS L 1096 一般織物試験方法」の8.9「水分率」により効果を確認する。

(2)吸汗・速乾素材
ISO 17617:2014 「Textiles-Determination of moisture drying rate」として、公定法及び試験基準目安値が設けられている。この試験規格はこれまで日本国内で用いられていた試験方法を、国際規格化したものである。

(3)透湿防水素材
 透湿度は、「JIS L 1099 繊維製品の透湿度試験方法」により、また、防水性は「JIS L 10992 繊維製品の防水性試験方法」により効果を確認する。
 


 b.熱特性(保温・軽量)
 b-1.積極加温
(1)吸湿発熱素材
 ISO 18782:2015 「Textiles-Determination of dynamic hygroscopic heat generation」として、公定法及び試験基準目安値が設けられている。この試験規格は、これまで日本国内で用いられていた試験方法を、国際規格化したものである。

(2)遠赤外線放射素材
 (一社)遠赤外線協会にて、繊維関係の統一基準を制定し、認定制度を発足させている。遠赤外線による熱的作用(加熱、蓄熱・保温)に関するものを対象とする。

評価項目 評価基準
放射特性 遠赤外線分光放射率
(FT-IR)
5~20μmの波長領域における分光放射率測定で、平均放射率が同等の組成、形状、目付け、厚さ、色調の遠赤外線未加工の対照試料に比べ、5%以上上回ること。または、上記波長領域の任意の区間での平均放射率が上記対照試料に比べ10%以上上回ること。注)区間とは、測定分解能以上の幅を持つ波長範囲を指す
再放射特性
(45度パラレル放射法)
信頼限界95%でプラスの有意を示すこと。
温度特性 サーモグラフィーによる
着用者の皮膚温度
試験試料と対照試料の間に、対象部位の着用前後の平均皮膚温度差が+0.5度以上あること。または温度画像面積比で明確な有意差が認められること。


(3)光吸収発熱素材
 現在、公定法として「繊維製品の光吸収発熱性評価方法」JIS規格の開発が進捗している。


 b-2.断熱保温または軽量保温素材
 一般的な保温性試験方法:「JIS L 1096 一般織物試験方法」の「8.28 保温性」による試験を行い、各社が自社基準により管理している。その他に、人工気象室内で着用試験を行い、サーモビューアなどにより数値化することも行われている。


 c.運動機能性
(1)ストレッチ性
「JIS L 1096 一般織物試験方法」の「8.14 伸縮織物の伸縮性」により効果を確認する。


 d.取り扱いの容易性
(1)防汚性
 汚れ(防汚物質)の種類については、「JIS L 1919 繊維製品の防汚性試験方法」に規定されている。(一社)繊維評価技術協議会にて「防汚加工」について評価基準と合格製品に付すラベルの認証制度が定められている。
(2)水系洗濯
 (一社)繊維評価技術協議会にて「WHS(水系洗濯)」について評価基準と合格製品に付すラベルの認証制度が定められている。


 e.光特性
(1)紫外線遮蔽素材
 紫外線遮蔽性能の統一評価方法:「アパレル製品等品質性能対策協議会 紫外線遮蔽加工分科会」で試験方法、評価基準、表示方法等について検討され、ガイドラインがまとめられている。
 
アパレル製品等品質性能対策協議会法
試験方法 分光光度計による全紫外線波長領域平均法(280~400nm)。蛍光増白剤を使用した場合にはフィルターを付ける。
基 準 加工品の透過率が未加工品の透過率の50%以下(遮蔽率が50%を超える)で次の3ランクに分ける。遮蔽率90%以上、80~90%、50~80%


なお、オーストラリア・ニュージーランド規格(AS/NZS)もある。分光光度計を用い、波長290~400nmの紫外線遮蔽率を5nm間隔で測定し、各波長に対する皮膚の感度と日光の相対エネルギーを係数に入れることで、紫外線保護係数を算出する。

ISO提案法(オーストラリア法…SPF値による方法)
ISO N1868 Solar UV prostective propeties-method of test for apparel fabrics
UV-A(315~400nm)とUV-B(280~315nm)の試料の透過率を測定する。蛍光増白剤を使用した場合にはフィルターを付ける。 波長別のエネルギーを勘案した式でUPF(Ultoraviolet Protection Factor)で表す。

(2)電磁波シールド素材
 電磁波シールド効果の統一評価方法:日本化学繊維協会ガイドライン

日本化学繊維協会ガイドライン法
電磁波シールド効果の測定方法 KEC法
周波数範囲 10~1,000 MHz
試料の設置条件 表面から照射する(経,緯方向で差がある場合は,低い値となる方向で照射する。)
表 示 周波数に対応した電界および磁界の遮蔽率を明記する。また,電界部分だけを表示する場合は電磁波(電界)、磁界部分のみを表示する場合は電磁波(磁界)と明記する。


 f.安全性
(1)難燃・防炎素材
 防炎製品の統一評価方法並びに基準:
 ■消防法に基づく特定用途の製品に適用する統一基準
消防法で人が集まる劇場のカーテン等には、防炎素材の使用が強制されている。
 
 
対 象 高層建築物、地下街、工事中の建築物、その他の工作物等の防火対象物において使用するカ-テン、布製ブラインド、暗幕、どん帳その他舞台で使用する幕、工事用シ-ト等の防炎対象物品
評価方法
および基準
カーテン類:45度ミクロまたはメッケルバーナー法、たるませ法、コイル法[基準]残炎時間、残じん時間、炭化面積じゅうたん類:45度エアーミックスバーナー法[基準]残炎時間、炭化長


 ■その他の防炎製品に適用する統一基準
次の製品については、「防炎製品認定要項」(消防庁の指導を受けた自主基準)に評価方法並びに基準が定められており、「防炎製品ラベル」の表示をすることができる。(公益財団法人 日本防炎協会所管)

対 象 寝具類(ふとん類,毛布類,カバ-類・敷布)、衣服類、防災頭巾、非常持出袋、テント類・シ-ト類・幕類(屋内用、屋外用)、布張家具等


(2)静電気帯電防止素材・導電性素材
 ■静電気帯電防止作業服の統一評価方法および基準
労働安全衛生法・施行令(第286条2)に基づき、特殊作業に従事する作業員は静電気帯電防止作業服および同作業靴の着用が義務付けられている。作業服の基準は「JIS T 8118 静電気帯電防止作業服の基準」を準用し、表示は「静電気帯電防止作業服」となる。服」となる。
 
JIS T 8118「静電気帯電防止作業服」 試験方法:タンブラー法
基  準:0.6μクーロン以下


 ■その他の制電性能の統一評価方法
「JIS L 1094 織物及び編物の帯電性試験方法」に試験方法が規定されている。統一基準はなく、各社が自社基準により管理している。


 g.健康・衛生
(1)抗菌防臭素材・制菌素材
 「抗菌防臭加工」と「制菌加工」の評価基準と認証制度
(一社)繊維評価技術協議会にて、「抗菌防臭加工」と「制菌加工」とについて評価基準と合格製品に付すラベルの認証制度が定められている。両者の評価方法は、適用する菌種が異なり、また判定基準も制菌加工の基準レベルの方が高く設定されている。
なお、「制菌加工」は「一般用途」と「特定用途」とに分けられている。「一般用途」とは、一般家庭で用いられる繊維製品の健康、衛生面の向上を目指したものである。「特定用途」とは、医療期間や介護施設などで使用される白衣やシーツなどの繊維製品を対象としている。
 
「抗菌防臭加工」と「制菌加工」の試験方法の概要
抗菌防臭加工 制菌加工
一般用途 特定用途
試験対象菌 黄色ぶどう状球菌
肺炎かん菌
緑膿菌
大腸菌
MRSA
試験方法 改訂JIS L 1902繊維製品の定量的抗菌性試験方法
注: は必須項目、 は選択項目
(社)繊維評価技術協議会:東京本部:03-3639-5084、大阪支所:06-6358-7747

また、(一社)繊維評価技術協議会は「光触媒抗菌加工」について評価基準と合格製品に付すラベルの認証制度を定めている。酸化チタンなどの光触媒効果を活用し、繊維上の細菌の増殖を抑制する加工で、黄色ぶどう球菌と肺炎かん菌の2菌種を使用して試験を行う。


(2)消臭素材
 (一社)繊維評価技術協議会にて、「消臭加工」の評価基準と合格製品に付すラベルの認証制度が定められている。その評価方法に用いる臭気成分は、次のように対象とする不快臭の種類により区別されている。

消臭加工の評価基準で対象としている不快臭と臭気成分
不快臭の種類 臭気成分
汗臭 アンモニア 酢酸 イソ吉草酸
加齢臭 アンモニア 酢酸 イソ吉草酸 ノネナール
排泄臭 アンモニア 酢酸 メチルメルカプタン 硫化水素 インドール
タバコ臭 アンモニア 酢酸 アセトアルデヒド ピリジン 硫化水素
生ゴミ臭 アンモニア 硫化水素 メチルメルカプタン トリメチルアミン
(一社)繊維評価技術協議会は、「光触媒消臭加工」の評価基準と合格製品に付すラベルの認証制度が定めている。繊維が臭気成分と触れることで、光触媒効果を伴い、不快臭を減少させる加工である。


(3)防ダニ素材
  防ダニ製品の性能基準や表示については、インテリアファブリックス性能評価協議会で、布団やカーペットを対象に耐久性を含めた「忌避性能」および「増殖抑制機能」の「基準と表示制度」が定められている。「忌避性能」とは、ダニが嫌う臭気を徐々に発散させる加工剤を付与してダニが寝具類に寄り付きにくくしたものであり、「増殖抑制性能」とは、ダニが増殖しないような性能である。
 
防ダニ効果試験方法
忌避試験 ガラス管法(ふとんわた)
侵入阻止法(カーペット,ふとん側地,敷布・カバー類)
増殖抑制試験 培地接触法


 これらの加工剤による防ダニとは別に、極細繊維を非常に高密度に織り上げて、ダニおよび死骸、糞などのダニアレルギーの元となるアレルゲンを通過させないような側地を用いた「ダニの通過防止」効果をうたう製品もある。

インテリアファブリックス性能評価協議会
カーペット:(06)6809-2868 (日本カーペット工業組合)
布団関係:(03)6661-0213(全日本寝具寝装品協会)、(06)6231-6781 (日本化学繊維協会大阪事務所)

(4)抗かび素材
 (一社)繊維評価技術協議会にて、「抗かび加工」について評価基準と合格製品に付すラベルの認証制度が定められている。繊維上の特定のかびの発育を抑制する加工である。

(5)抗ウイルス素材
 (一社)繊維評価技術協議会にて、「抗ウイルス加工」について評価基準と合格製品に付すラベルの認証制度が定められている。繊維上の特定のウイルスの数を減少させる加工。試験方法と評価基準はISO 18184(繊維製品の抗ウイルス性試験方法)に従う。

(6)防蚊素材
 繊維製品の防蚊性試験方法は、JIS規格を開発中である

(7)マイナスイオン素材、美容素材
 これらの機能性素材の評価は、各社が自主基準を設定し管理している。


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1.主要な化学繊維機能性素材の概要
3.主要な化学繊維機能性素材の各社別一覧表

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