よくわかる化学せんい

高機能化学繊維素材

  1.主要な化学繊維機能性素材の概要  




〔快適性・春夏〕 

(1)吸水速乾素材
  吸水速乾素材とは水分を吸収してすぐに乾かす素材を言います。速乾性は合成繊維の疎水性が生かせますので、いかに吸水性を付与するかが大事なポイントになります。吸水性を付与する代表的な手法は毛細管現象を利用して繊維間の隙間などに水分を吸い取るというものです。毛細管現象を高めるには表面張力を大きくすることが必要であるため、繊維の単位容積あたりの表面積を広くして水との接触面積を増やし表面張力を大きくする工夫がなされています。繊維の単位容積当たりの表面積を拡大する方法には、①繊維の極細化②異型断面化③繊維側面の多孔化―などの手法があります。

(2)接触冷感素材
  接触冷感素材は生地を触った時にひんやりと感じる素材です。代表的な手法は熱伝導率が高い繊維を使うことで、身体が触れた瞬間に熱を生地側に素早く移動させることで冷たい触感が得られます。また、水分を素早く吸収・拡散して気化熱を奪う手法もあり、近年では加工で生地に付着させた冷感成分による溶解吸熱作用を利用したものや、脳が冷たいと感じる成分を利用した冷感素材なども開発されています。

(3)調湿素材・吸放湿素材
 調湿素材・吸放湿素材は、周りの湿度に応じて吸湿量が変化する素材です。多湿時にはより多くの湿度を吸収し、湿度が低い時には吸った湿度を放出して湿度をコントロールします。ここでは水分保有率が高い繊維が使われるほか、高吸湿性ポリマーの混合、芯鞘構造で糸の内部に吸湿性を持たせるなどの手法もあります。

(4)遮熱・UVカット素材
 UVカット素材と遮熱素材の代表的な手法は、紫外線や熱線を吸収もしくは拡散させる物質を繊維内部に入れるというものです。光は紫外線、赤外線などから成り、紫外線を遮蔽すればUVカット、赤外線を遮蔽する効果は遮熱素材になります。また、可視光線を防ぐことで透けない素材にすることもできます。
 光を拡散する物質には二酸化チタンや酸化亜鉛など、光を吸収する物質には芳香族化合物などがあります。これらの物質を繊維内部に入れ込むことに加え、異型断面繊維を使って繊維表面で光を乱反射させることなどにより、さらに効果を高める手法もあります。また、後加工で紫外線吸収剤を生地に付着する手法もありますが、これは繊維内部に物質を入れることが難しい天然繊維で多くみられます。

(5)汗染み防止
 汗染み防止素材は、肌に接する面はある程度汗を吸いますが、生地の表にまでにじみ出さないように工夫した素材です。代表的な手法は、生地の外側の片面だけ撥水加工をする形です。汗染み防止とは逆に生地の肌に触れる面だけ撥水加工を施して大量の汗をかいても生地に染み込ませず外に逃がす汗対策素材なども開発されています。




〔快適素材・秋冬〕 

(1)保温素材
  保温素材は、体温などで暖まった空気を繊維の内部に多く貯め込んで外に逃がさない工夫を施した素材で、静止時の空気の熱伝導率は非常に低いという特徴を生かしています。ポイントは繊維内部に多くの空気層を作ることで、例えば中空糸や異型断面糸を使って空隙を多く作ったり、捲縮等により繊維を嵩高にするなどの手法があります。多くの空隙を作りますので、生地の軽量化も同時に実現することができます。

(2)発熱素材

a.吸湿発熱素材
 吸湿発熱素材は水が繊維に吸着する際に熱を発生するという吸着熱を利用した素材です。水が蒸発する際に熱を奪う冷感素材とは逆の原理です。吸湿発熱力を高めるには吸水量を高めることが有効ですが、さらに暖かい空気層を逃がさないようにする保温機能を併せ持たせることで、生地内をさらに暖かくすることにつながります。


b.伸縮発熱素材
 伸縮発熱素材は身体の動きにともなって生地が伸び縮みすることで発熱する素材です。ゴムが伸びた時に熱を発するのと同じ形ですが、繊維では特殊なタイプのスパンデックスの使用や特殊な生地設計など発熱量を高める工夫がポイントになっています。


c.遠赤外線放射素材
 遠赤外線放射素材は、加熱されると遠赤外線を放射する効果が高い化合物(珪酸ジルコニウム系セラミックスなど)や鉱石(ブラックシリカなど)を繊維の内部や表面に付与して保温性を向上させています。 遠赤外線は物体に当たると、その物体の分子や格子を振動させて熱を発生させます。遠赤外線の周波数は繊維や人間を含む動物を形成する分子の振動と一致しているため、照射された遠赤外線は吸収され、構成要素である分子の振動を活発にするとされます。遠赤外線は人体からも放射されており、生地内部にアルミなどを付けて人体から発する遠赤外線を反射させて暖める素材も開発されています。


(3)蓄熱素材
  蓄熱素材は太陽光の特定波長を吸収して熱エネルギーに変換する効率の高い物質(炭化ジルコニウムなど)を繊維の内部や表面に付与しています。例えば炭化ジルコニウムの場合、波長約2μ㍍以下の太陽光を吸収して熱エネルギーに変換し、それより長い波長の光は吸収せずに反射する性質があります。




〔着用快適性〕 

(1)ストレッチ素材
  ストレッチ素材とは、体の動きにあわせて伸縮する素材です。スポーツウエア、ファンデーション、水着、ストッキングなど伸縮性が必要な製品に使われますが、近年ではスーツ類やスラックスのシルエットを保つ目的にも採用されています。また、快適な着心地からカジュアルパンツにも広く用いられるようになりました。
 ストレッチ素材に用いられる糸は、ポリウレタン繊維のように伸縮性のある繊維をそのままで、または他の繊維と複合した糸として用いられるもの、ポリエステルやナイロンなどを仮撚加工した加工糸があります。
 ポリウレタン繊維はゴムのように長く伸び、高い回復性を有する繊維で、ゴムより強く、廊下もしにくい特徴を持っています。さらに、自由に染色でき、細い糸もできます。この糸を織編物に混入させることにより織編物に伸縮性を与えることができます。
 対して、ポリエステルやナイロン、PBT(ポリブチレンテレフタレート)繊維、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)繊維などで仮撚加工したものは、ポリウレタン繊維のように大きな伸びはありませんが、適度な伸びが生まれます。
 仮撚加工とは熱可塑性を有する長繊維を加撚→熱固定→解撚の操作を加えることで、繊維束に捲縮を与えて伸縮性を付与する加工です。また、ポリエステルで熱収縮差のあるポリマーをサイド・バイ・サイドに複合紡糸し、さらに強撚を掛け後加工工程の熱処理で収縮差を発現させ、また強撚の撚り戻り(解撚トルク)により伸縮性を与えたものがあります。


(2)軽量素材
  軽量素材とは文字通り、軽い素材です。ポリプロピレンのように水に浮くような比重の軽い繊維が用いられますが、ポリエステルなどで繊維を中空にしたり多孔化したりすることで見かけの比重を小さくした素材も多く開発されています。繊維自体を中空にする方法と、羽毛のように極細繊維の層を作って軽量にする方法があります。ポリエステルやナイロンは繊維の原料となる高分子を細いノズルから押し出し、空気で冷やして繊維にします。この時に特殊な形状のノズルを用いることで中空形状の繊維を得ることができます。ノズル形状と紡糸制御技術の発達で様々な形状の中空繊維を作れるようになりました。
 

(3)撥水素材
 撥水素材は水を弾く素材です。フッ素化合物など分子間引力の弱い加工剤を布面にコーティングし、水や油を弾く機能を持たせます。環境や人体への安心・安全面から加工剤の改良、生地と加工剤の組み合わせ、ノンコーティングによる撥水素材が開発されてきました。


a.撥水剤の改良について
 撥水加工剤には炭素数が8個のフッ素系加工剤が用いられてきましたが、微細に含まれるパーフルオロオクタン酸(PFOA)が地球環境や人体に影響を与える可能性がないとは言い切れないということで、炭素数が6個のフッ素系加工剤や非フッ素系加工剤が使われるようになりました。PFOAは化学的に極めて安定した物質で自然に分解されにくく、自然や人体に残留することが懸念されています。以前の主流だった炭素数が8個のフッ素系薬剤は原料に使うC8テロマーが製造工程の中で微量のPFOAを副生するため、製品中に微量ながらも残留してしまう課題があったので、その対策として炭素数を2つ減らしたC6テロマーが使われるようになりました。その背景には炭素数を減らすと安全性が高まる一方で、高い撥水・撥油性能を実現しにくいという課題が克服されたことがあります。また、完全に懸念を払拭するためフッ素系ではない撥水加工剤への注目も高まっています。


 b.ノンコーティング
 加工剤を使わず、特殊加工を施した糸と生地構造の工夫、ナノ技術を組み合わせて従来の加工剤と同等の撥水性を発揮する素材もあります。布面に微細な凹凸構造を持たせて、水滴との接触面積を減らして水滴が生地表面を転がるようにして水滴の浸透を防ぐ仕組みです。ハスの葉の表面構造が参考になっています。

(4)透湿防水素材
 透湿防水素材は、防水性があり、かつ、水分(水蒸気)のような気体は透過させる(透湿性)特殊な被膜を加工による布面に形成させた素材です。図に示すように水蒸気は通すが、水滴は通さない極めて小さい穴のあいた被膜を布面に形成させるものです。
 被膜を形成させる方法にはコーティング加工とラミネート加工があります。コーティング加工は樹脂を布面に薄く均一に塗布した後に熱をかけて樹脂を乾燥させ、被膜を形成させる方法(乾式コーティング)と、水溶液中で化学的に樹脂を反応させて被膜を形成させる方法(湿式コーティング)があります。一般的に、透湿防水加工の場合は、後者による方法で、ポリウレタン樹脂などを溶媒に溶かした液を布面に塗布し、水溶液中で反応させてポリウレタン被膜を再生させます。溶媒が被膜形成時に樹脂から抜ける時に微細な孔が開きます。
 一方、ラミネート加工は、あらかじめポリウレタン樹脂やフッ素系樹脂の多孔質なフィルムを作っておき、これを接着剤で布面に貼りつける方法です。一般的にラミネート方式の方が、コーティング方式と比べて防水性が向上します。




〔清潔性〕

(1)消臭素材
 消臭素材は臭気成分を吸着、中和、分解する物質を繊維に付与しています。臭気成分がその物質に触れることで減少して不快臭が消える形で、次に挙げる抗菌防臭とは仕組みが異なります。衣料用では汗臭や加齢臭、排せつ臭などの原因となるアンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールが4大臭気成分とされ、そのすべてに効果がある素材もあります。そのほかにもタバコなど様々な不快臭に効果がある素材が開発されています。

(2)抗菌防臭素材
  抗菌・防臭素材は、汗や汚れを栄養源に繁殖する菌の増殖を抑えることで嫌な臭いの発生を防ぎます。日本の代表的な認証制度である繊維評価技術協議会のSEKマークでは、抗菌防臭の性能は黄色ぶどう球菌で評価されます。黄色ぶどう球菌は代表的な皮膚常在菌で汗臭の原因物質を発生させるとされる菌ですが、近年は部屋干し臭の原因とされるモラクセラ菌など抗菌防臭素材の対象も広がっています。

(3)制菌素材(一般用途、特定用途)
  制菌素材は、繊維上の菌の増殖を抑える機能を持ちます。臭いを視点にした抗菌防臭とは異なり、制菌素材は繊維上の皮膚常在菌や有害細菌を特定して、それを増えないように抑制することを視点にしています。評価試験での基準値もより厳しく、菌の増殖幅をゆるやかに抑える抗菌防臭に対し、制菌素材は元の数値より菌の数を減らしていきます。
 SEKマークでは制菌素材の中でも一般用途と特定用途の2種類があります。特定用途は医療機関や介護施設などで使われる基準になり、一般での店頭販売はできません。対象となる菌の種類は、一般用途では黄色ぶどう球菌と肺炎桿菌ですが、特定用途ではそれに加えてMRSA(メチシリン耐性黄色ぶどう球菌)に対しての効果も必要になります。任意の試験になりますが、大腸菌、緑膿菌、モラクセラ菌に対する評価も設定されています。

(4)防カビ素材
 防カビ素材は、繊維上のカビ(真菌)の増殖を抑える素材です。カビは胞子で増えますので、細胞分裂で増える細菌の増殖を抑える抗菌防臭素材や制菌素材とは異なる評価方法が必要になります。

(5)抗ウイルス素材
  繊維上の特定のウイルスの数を減少させる素材です。ウイルスの数を減らすためにはウイルスを不活性化することが必要ですが、その手法はいくつかあります。ウイルスにはエンベロープという脂質などでできた膜状の構造があるものとないものがありますが、エンベロープを持つウイルスは、繊維上にエンベロープを破壊する成分を付与することで感染力を弱めます。消毒液などもエンベロープを破壊して不活性化します。




〔美容・健康〕

(1)保湿素材
  保湿成分やビタミンの前駆体物質などを繊維に付与した素材です。保湿成分を付与した素材では、繊維にうるおいを保てるための肌にやさしい素材となります。

(2)pHコントロール素材
  pHコントロール素材は、皮膚の状態を弱酸性に保つ素材です。人間の肌は弱酸性で、これが運動で汗をかいたり、そのあとに石鹸で体を洗ったりするとアルカリ性に偏ります。肌がアルカリ性になると悪玉菌が増殖し、においや肌荒れを引き起こしてしまいます。pHコントロール素材は衣服についた汗や肌に残った汗の成分を弱酸性に変え、肌を健康な状態に変えます。

(3)ノンアレルゲン素材(防ダニ、花粉付着防止)
  ノンアレルゲン素材とは、アレルギー反応や過敏症反応を引き起こす因子であるアレルゲンに対して、アレルゲン沈静化剤を布に加工したり、高密度化など生地自体の物理的構造を工夫したりしてアレルゲンの透過や付着を防ぐ素材です。アレルゲン沈静化剤の主成分として、特殊アミノ酸誘導体、ナノ粒子を被覆するタイプ、銀担持無機化合物などが用いられ、花粉やダニに作用します。

a.防ダニ素材
 防ダニ素材とはダニを忌避(ダニを寄せ付けない)、ダニの増殖抑制(ダニが繁殖しない)、通過防止(ダニを通過させない)などの性能を付与した素材です。ダニの忌避と増殖抑制は、繊維にダニの忌避剤や増殖を抑える薬剤を付与します。ダニの通過防止は、極細繊維を用いて高密度化した織物などを用いてダニやダニのフンや死骸を物理的に通過させないようにした素材で、布団側地に用いられます。

b.花粉付着防止
 花粉が付着しにくいか、付着しても払えば落ちやすくした素材です。帯電防止加工を付与して帯電による花粉の府逆を防ぎ、さらに織物組織を高密度化したり、布表面の凹凸を抑えてフラットで花粉が付着しにくい生地組織になっています。




〔イージーケア〕

(1)形態安定素材
 樹脂加工の技術によって防シワ性などを向上したものが形態安定素材で、シャツやブラウス、スラックスなど幅広い製品に応用されています。生地に樹脂液を付与しておき、縫製後に熱処理機を用いて樹脂を架橋反応させるポストキュア方式(気相加工方式を含む)のほか、生地に樹脂加工を施すプレキュア方式があります。洗濯後のシワの残り具合を表す指標にウオッシュ&ウエア性(W&W性)があるのですが、形態安定には洗濯10回後で3.2級以上が求められます(アイロン後のシワのない状態がW&W性5級・シワカット率100%)。

(2)ウオッシャブル・防縮素材
  ウオッシャブル・防縮素材とは、綿製品を洗濯・乾燥した後でもシワが残ることなく、アイロン掛けをしなくても着用できる素材です。ポリエステル繊維製品の高いウオッシュ&ウエア性(W&W性)に近づくことを目的に開発されてきたため、洗濯時における速乾性や防縮性はもちろん、着用中にシワが付かない防シワ性も要求されます。通常、綿織物の場合、加工中の縦方向への引っ張りが洗濯により緩和されて生じる緩和収縮と、繊維が膨潤して横断面積が増大することによる膨潤収縮があります。洗濯収縮率も5~10%と非常に大きく、マーセル化や樹脂加工、機械的防縮加工によって1~2%の収縮率に抑えられています。

(3)防汚素材(SR/SG)
  防汚素材は、繊維製品の汚れを防止する素材です。汚れの種類や防汚効果によって素材が分かれ、付着した汚れを落ちやすくするSR(ソイルリリース)加工と、汚れを付きにくくするSG(ソイルガード)加工の二つに大別されます。疎水性の合成繊維(表面)を親水化するのがSR加工で、汚れが付着しても洗濯やドライクリーニングで落ちやすくなります。親水性高分子として(メタ)アクリル酸共重合物、カルボシシメチルセルロースなどを用いられている。SG加工は、樹脂加工などによって親水性と親油性を付与する素材で、親水性と親油性の両方の汚れが付着しにくくなります。レインコートやワーキングウエアなどに幅広く利用されている。汚れが付きにくく、落ちやすいという両方の効果を併せ持つSGR(ソイルガードリリース)加工もあります。




〔安全〕

(1)難燃・防炎素材
  難燃素材は原料である高分子そのものを燃えにくい性質にし、紡糸した繊維。防炎素材は、それ自体燃えやすい繊維製品に難燃剤を付着させる加工です。難燃素材は①材料の熱分解を抑えて分解ガスの発生を抑える②発生した分解ガスと酸素との接触を遮断することが基本原理で、ハロゲン系化合物(塩素やフッ素)、リン系化合物を繊維自体に含ませて燃焼を防ぐ方法、芳香族系の剛直性の高い高分子を使って可燃性ガスの発生を抑える方法があります。
 熱溶融性の合成繊維は比較的、燃えにくい性質を持っていますが、安心・安全がより求められる用途では、防炎加工でさらに燃えにくくします。染色時にリンまたはハロゲン系の化合物を染料と併用して吸着させる方法が一般的です。その方法として①水溶液の防炎薬剤に繊維製品を浸し乾燥や熱処理を加える方法②防炎薬剤を分散させた合成樹脂を繊維製品の表面にコーティングする方法があります。  難燃機能を付与する成分として、ハロゲン系化合物が優れた機能を発揮しますが、臭素(Br)系難燃剤の人体などへの高い蓄積性と分解のしにくさから「化学物質の審査及び製造棟の規制に関する法律」(化審法)の「第一種監視化学物質」(国に無断で製造・輸入できない)に指定されたことで脱臭素系難燃剤の動きが進んでいます。

(2)制電素材
  静電気によって埃がついたり、衣服がまとわりついたりすることを低減するのが制電素材です。繊維に親水性を持たせて帯電を防止する仕組みです。疎水性繊維の内部に親水性のポリマーを練り込むことで、空気中の水分を吸収し、その水分を通じて電気を拡散させます。制電性能として、20℃、相対湿度40%での摩擦帯電圧が1.0~1.5kv以下であることが望まれています。通常の合成繊維は3~5kvです。

(3)導電素材
  導電素材は精密機器、エレクトロニクス工業、化学プラントにおける防塵衣や防爆作業服など制電素材よりも厳しい電気特性が求められる用途に使われます。カーボンや導電性セラミックなどの微粒子を芯鞘構造繊維の深部に配合する方法が主流で、導電性物質を通じて電子が移動し、衣服の広い表面から空中へごく微弱な放電によって電荷を消滅させる仕組みです。制電素材と違い、水分が関係しないので、湿度の影響を受けることがほとんどありません。
 帯電防止剤を布面に塗布する加工もあります。繊維表面を導電化することが基本原理です。摩擦によって生じた静電気を帯電防止剤の親水基に吸着する水分により導通分散させること、イオン性帯電防止剤そのものが持つ電導性で、静電気の発生を防止することの2つあります。一時的な処理にはアルコールや海面活性剤などの吸湿性帯電防止剤が使われ、半永久的な処理には第四級アンモニウム塩を代表とするカチオン性帯電防止剤やオキシエチレン基を持つポリマー、オリゴマー、高分子電解質が用いられます。
 このほかに繊維表面を親水化する方法として、プラズマ処理、親水性モノマーのグラフト重合があります。

(4)高視認素材
  高視認素材は、遠くから見ても目立つ服、夜間でも明るく見える服に使われる素材で、高い堅牢度を持ちながら鮮明な蛍光色に染められています。蛍光素材と反射材を組み合わせた高視認安全服では2014年に国際規格「ISO20471」が発行し、日本でも2015年10月に「JIS T8127」が制定されました。また、欧州には「子供服を含む仕事以外の高視認衣服に関する規格」として「EN1150」があり、子供の交通事故低減などにも活用しようとする動きもあります。これらを背景に高視認素材の開発も進んでいます。高視認素材はオレンジ、レッド、イエローなどの蛍光色を高い堅牢度で鮮明に染めることがポイントですが、さらに防汚や吸汗速乾、透湿防水などユニフォームに求められる機能を付与する形での素材開発も進んでいます。





〔環境配慮〕

(1)リサイクル素材
 石油化学原料由来のポリエステルなど合成繊維製の繊維製品を回収して再利用する、省資源で環境負荷低減に貢献する素材です。①ケミカルリサイクル②マテリアルリサイクル③サーマルリサイクル④ペットボトルのリサイクルなどの方法があります。

(1)―1 ケミカルリサイクル
 合繊製品を集めて洗浄、細かく裁断した後で化学的に分解し、ポリエステルならジメチルテレフタレート、ナイロンならカプロラクタムという原料段階にまで戻し、繊維原料として再使用する方法です。

(1)―2 マテリアルリサイクル
 材料のままでリサイクルする方法です。古着等を布状またはわた状までばらしたり、ほぐしたりして別の繊維製品として再利用します。合成繊維100%の場合は、加熱して溶かし、プラスチックなどの成形品原料として利用する方法もあります。

(1)―3 サーマルリサイクル
 焼却して発電などに再利用する方法です。廃棄された繊維製品から金属などを取り除いて工場で使用する石炭ボイラーの燃料として利用する取り組みが行われています。

(1)―4 ペットボトルのリサイクル
 ペットボトルもポリエステル繊維に再生利用されます。ペットボトルはポリエステル繊維と同じくポリエチレンテレフタレートが原料なので、ペットボトルから再生した原料でポリエステル繊維を作ることができます。

(2)植物由来原料
  合成繊維の多くは石油化学製品を原料に製造されますが、その一部または全てを植物由来原料にした繊維が商業生産、研究開発されています。計画栽培された植物、または非可食性植物を原料とすることで、CO2排出削減や化石資源の維持など環境負荷低減につながります。

(2)―1 ポリエステル
 合成繊維の中でも元も生産量の多いのは、テレフタル酸とエチレングリコールから作られるポリエステルです。このエチレングリコールを植物由来にしたものが多く開発されており、この場合、全体の約30%が植物由来原料になります。すでに多くの繊維製品に使われています。
 100%が植物由来のポリエステルも研究されています。テレフタル酸の原料であるパラキシレンを植物由来にし、そこから誘導されたテレフタル酸と植物由来のエチレングリコールを原料とした完全に植物由来のポリエステルの重合に成功しています。商業生産に向けた動きが今後、期待されます。

(2)―2 ナイロン
 ポリエステルと同様に3大合繊に挙げられるナイロン繊維も植物由来に向けた開発が行われています。リジン(アミノ酸)を酵素反応により脱炭酸することで製造したペンタン―1.5―ジアミンをジカルボン酸と重合することで製造します。このナイロン繊維は植物由来というだけでなく、例えばナイロン56繊維にすると石油化学由来のナイロン繊維と強度や耐熱性が同等なことに加え、吸放湿性があり肌触りも良いなど快適性に優れた衣料品への展開も期待できます。

(3)生分解性素材
 土に埋めると微生物が分解し、自然に還る性質を生分解性と言います。ポリ乳酸繊維が代表的な素材です。トウモロコシを原料に、乳酸菌による乳酸発酵を行って作った乳酸を重合してポリ乳酸とし、繊維化します。使用後に廃棄しても土中や水中の微生物の栄養源として利用され、最終的には水と炭酸ガス(CO2)に分解されます。



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2.主要な化学繊維機能性素材の評価方法の概要
3.主要な化学繊維機能性素材の各社別一覧表

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