よくわかる化学せんい

KASEN TOPICS

 
No.22
クールビズとウォームビズ対応素材
はじめに
 環境省では、地球温暖化対策の一つとしてオフィスでの省エネを実現するためにクールビズとウォームビズを提唱しています。化学繊維などの素材メーカーにおいても、このクールビズに対応する涼しい素材を、また、ウォームビズに対応する保温素材を展開しており、その主なものを紹介します。
 
クールビズ対応素材
1.涼しい素材

クールビズ対応素材の一つに涼しい素材を利用したものがあります。“涼しい素材”とは、触った時に冷やっとする接触冷感を有する素材です。天然繊維の麻や化学繊維のレーヨンやキュプラがこの接触冷感に優れます。これは、①繊維中に水分を多く含むこと、②熱伝導率が高いこと、③さらに触った時に少し硬く感じる(シャリ感)こと、などが影響しています。合成繊維にも“涼しい素材”があり、その一例として、写真のような芯にポリエステル、鞘にエバール(ポリエチレン樹脂とポリビニルアルコール樹脂との複合樹脂)を用いた芯鞘複合繊維があります。鞘のエバールは、水分となじみのよい水酸基を多く含み、この繊維は、着用した時に冷感を与えます。


クラレ「ソフィスタ」(クラレ提供)
  2.吸湿・吸汗・速乾素材

吸湿性や吸水性を向上させた素材もあります。吸湿性は、気体の汗を吸う性質で主に繊維の化学的な組成で決まります。一方、吸水性は液体の汗を吸収する性質で、繊維の単位質量当たりの表面積を大きくする(繊維を細くする、断面を異形化する、繊維側面に溝をつける、繊維構造を多孔にするなど)と毛細管現象で吸水性が向上します。人は通常の状態では、気体の汗を出しますが(不感蒸泄)、暑い時や運動時には液体の汗を出します。合成繊維は、一般的に吸湿性が劣りますが、改質して吸湿性を高めた素材があります。また、同時に吸水性を高めた素材もあります。合成繊維は、吸湿性や吸水性を高めても、吸った汗は素早く放出されるため速乾素材となります。
この吸湿・吸水・速乾素材の一例として、吸湿性と放湿性を向上させた“改質ナイロン”と吸水性を向上させた“異形断面形状ポリエステル”とを混用した素材があります。通常の状態では気体の汗を吸収し、運動時などは液体の汗も吸収します。吸収した気体・液体の汗は素早く拡散され、衣服内の不快指数を抑え快適性を保ちます。


ユニチカ「ハイグラLU」(ユニチカ提供)
 
  3.高通気性素材

生地の通気性や吸水性を高めて清涼とした高通気性素材もあります。この一例として、吸水・速乾性のある異形断面形状ポリエステルを縦糸に用い、緯糸には表面に凹凸を作り通気性を高める工夫をした綿糸を用いた生地があります。通常のポリエステル/綿混生地を用いたシャツと比較して、通気量で約5倍、吸水性で約7倍向上しています。


東レ「風通るシャツ」(東レ提供)
  4.省エネ対応素材

各社の省エネ対応素材を使った夏用のシャツが商品化されています。夏場の省エネ対策として政府が推奨している冷房温度28℃でも快適に過ごせるドレスシャツです。この一例として、中空形状にして軽量化したポリエステルわたと、細繊度の高級綿を混紡させた糸を用い、通気性の良い組織に織りあげた、通気性、吸水性、軽量性を備えた生地があります。


「エコシス28℃」と従来品のサーモグラフによる放熱比較(帝人提供)
 
  5.通気コントロール素材

近年、環境の変化に対応して通気性をコントロールする素材が登場しています。一例として、トリアセテートとアセテート(ジアセテート)を“だるま状”に複合紡糸(二つの成分を一つの口金から押し出して繊維にする)して、織編物にしてから、アセテート(ジアセテート)を脱アセチル化し、セルロースにしたものがあります。この糸は、周りの湿度が低いとセルロース部分が脱水して収縮し、糸に捲縮(クリンプ)がかかり、生地の通気性を抑えます。周りの湿度が高いとセルロース部分は普通の状態になって糸の捲縮が無くなり、生地の目が開いて通気性が良くなります。


三菱レイヨン「ベントクール」
(三菱レイヨン提供)
ウォームビズ対応素材
  1.軽量保温素材

繊維内部に空気孔を作ると、軽量で保温性を高めた素材ができます。孔のあいた繊維を“中空繊維”と呼びますが、①初めから中空の繊維を作る方法と、②二つの成分からなる繊維を作り、織編物にしてから片方の成分を溶かして中空にする方法があります。

中空繊維
帝人「エアロトップ」
(帝人提供)
旭化成せんい「ツインエアー」
(旭化成せんい提供)

後で溶出させて中空とした繊維
東レ「セボナーサムロン」
(東レ提供)

  2.発熱する素材
2-1)蓄熱保温素材
太陽光を吸収し、熱エネルギーに変換する物質(炭化ジルコニウムなど)を繊維の原料に練り込んでから繊維化したものがあります。練り込まれた物質が太陽光を吸収し熱に変換するため、衣服の表面温度が高くなります。また、この素材は、熱変換機能に加えて人体から発生する熱(遠赤外線)を反射する機能(衣服の外に逃がさない)を付与させて、保温性を高めています。

中空繊維





ユニチカ「サーモトロン」
(ユニチカ提供)
クラレ「ブラックシリカ」
(クラレ提供)

 
2-2)遠赤外線放射素材
加熱されると遠赤外線を放射するセラミックスがあります。遠赤外線は、物質に当たると熱に変換しその物質を暖めます。このセラミックスを、特殊技術でポリエステルに練り込んだ繊維が開発され、寝装品に利用されています。写真の断面中に見える白い粒子が、遠赤外線放射セラミックスです。

クラレ「ロンウェーブ」(クラレ提供)
 
2-3)吸湿発熱素材
羊毛繊維が吸湿して暖かくなることは古くから知られていますが、これは水分が繊維表面の水酸基などに吸着されて、運動エネルギーが熱エネルギーに変換するもので、吸湿発熱と言います。合成繊維のアクリルなどを改質して、水分を多く含むようにしたアクリレート系繊維があり、このアクリレート系繊維は20℃・相対湿度65%の標準状態で41%の水分を含むものもあります(羊毛は15%)。この繊維を綿などと混用して織編物にした素材が吸湿発熱素材で、肌着などで商品化されています。
高湿度雰囲気中では発熱して温度が上昇し、低湿度になると温度は下がる
東洋紡績「エクス」(東洋紡績提供)
 
  3.省エネ対応素材

クールビズ対応素材で紹介した省エネ対応素材のウォームビズ版があります。冬の暖房温度として政府が推奨している温度の20℃では少し寒いですが、この環境でも快適に仕事ができるドレスシャツがあります。使われている素材は、かさ高性、保温性、軽量性の3つの性能を兼ね備えた素材です。一例として、中空形状とした軽量のポリエステルに、特に保温性を強く求める場合には羊毛と混用、通常の場合は綿と混用した素材があります。また、織物の構造を高密度でかさ高な組織にして保温性を高めた素材もあります。


「エコシス20℃」と従来品のサーモグラフによる放熱比較(日清紡績提供)
 
  4.温度調整素材

周りの温度が変化した時に、素材が暖かくなったり、冷たくなったりする素材が温度調整素材です。パラフィンのような、常温域で固体と液体に容易に変化する物質を相変換物質と呼びますが、この物質を繊維に固着させたものです。


 

一例として、相変換物質をマイクロカプセルに封入し、織編物に加工した素材の試験結果を示します。外気が温度変化しても衣服内の皮膚表面温度は緩和されています。


大和紡績「サーモカプセル」(大和紡績提供)
(2006年4月掲載)
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