よくわかる化学せんい

KASEN TOPICS

高性能・高機能化学繊維素材やその用途展開などについてご紹介します。

Vol.4 植物由来の化学繊維

カーボンニュートラルで環境に貢献

 日本の化学繊維メーカーは各社とも地球環境に配慮した事業運営を重視しており、素材開発においてもエコが重点テーマの一つになっています。具体的な取り組みとしては、温室効果ガス削減につながる製造プロセス革新やリサイクルシステムの確立などが挙げられますが、ここにきて注目されているのが、植物由来の原料を使った素材の開発です。
 植物由来の原料を使った商品が注目されている背景には、「カーボンニュートラル」という考え方があります。石油などの化石資源とは異なり、植物は成長の過程において光合成でCO2を吸収します。このため、商品の生産や廃棄時にCO2を大気中に排出したとしても、それは原料の成長過程において吸収されたCO2量で相殺されます。最終商品が消費者に届くまでには輸送なども必要ですので、厳密に言えば排出量がまったく増えないというわけにはいかないのですが、商品のライフサイクル全体でみた際のCO2排出量は大きく削減されます。また、化石資源の採掘から精製までに必要な製造エネルギーと比べても、植物由来原料は環境への負荷を低減することができます。
  また、化石資源は有限で、このまま採掘を続けていくといずれは枯渇してしまいます。一方、植物原料は再生可能な資源です。植物由来原料を有効に活用すれば、化石資源の可採期間を延ばすことにもつながります。もちろん植物由来原料の使用が乱伐や食糧問題につながってはいけませんので、化学繊維に使用する植物には、計画栽培や非可食性植物の使用などの配慮がなされています。

綿花や木材パルプを使った化学繊維

 植物を原料とする化学繊維には様々な種類があります。とくに衣料で使う素材には外観や機能性も重要ですので、単に環境にやさしいというだけでなく、素材感や機能性も併せ持つ形で展開されています。
  例えば三菱レイヨンのアセテート繊維は木材パルプが主原料で、パルプに含まれる繊維素を酢酸で反応させて製造されます。この際、繊維素につく酢酸基の数で、ジアセテート(酢酸基が2つ)とトリアセテート(酢酸基が3つ)に分けられます。外観はシルクのような光沢感やドレープ感などが特徴で、天然繊維と合成繊維の良さを併せ持つ半合成繊維として、高級婦人服などの用途で展開されています。

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アセテート繊維の商品例(三菱レイヨン・テキスタイル提供)

 また、旭化成せんいのキュプラ繊維「ベンベルグ®」は綿花の種子の周りに生えているうぶ毛状の繊維(コットンリンター)を使う再生セルロース繊維です。コットンリンターは従来使われていない部分であり、資源の有効利用という意味でも環境に配慮されています。シルクのようななめらかさや光沢、吸放湿性などの特徴を持ち、裏地やアウター、インナー、寝装などの用途で広く使われています。

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コットンリンター(旭化成せんい提供)

トウモロコシなどから作られるポリ乳酸繊維

 東レの「エコディア®」、ユニチカの「テラマック®」などのポリ乳酸繊維は、トウモロコシなどの植物を原料としています。原料となる植物から抽出したでんぷんを発酵して乳酸を作り、それを結合させてポリ乳酸を作ります。
  ポリ乳酸繊維は、原料の乳酸が植物由来のためカーボンニュートラルであるほか、商品の廃棄時においても、①焼却時の燃焼熱が低い、②土中に埋めると自然に微生物が分解する生分解性-などの特徴があり、繊維だけでなくフィルムやシートなど様々な形態で展開されています。

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「エコディア®」(東レ提供)

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「テラマック®」の物質循環システム
(ユニチカ提供)

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「テラマック®」のCO2排出量(ユニチカ提供)

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「テラマック®」の分解試験(ユニチカ提供)

植物由来原料を使ったポリエステル

 合成繊維の中で最も生産量の多いポリエステルでも、植物由来原料を使ったバイオポリエステルが注目を集めています。ポリエステル繊維はテレフタル酸とエチレングリコールから作られますが、現在はこのうちエチレングリコールを植物から作るのが主流になっています。この形ですと全体の約30%が植物由来原料になります。
 帝人ファイバーは植物由来原料のポリエステル「プラントペット®」を展開しています。同社はすでにポリエステルの循環型リサイクルシステムを確立していますが、これと合わせてバイオポリエステルを展開していくことで、これまでリサイクルが難しかった分野に関しても、環境配慮型素材を広げていくことができるようになります。

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「プラントペット®」(帝人ファイバー提供)

また、東洋紡はさとうきびを原料とするポリエステル不織布「バイオボランス®」を展開しています。使用するさとうきびは、従来捨てられていた絞り粕の部分を使いますので、植物の乱伐につながる恐れもありません。幅広い用途に展開していく計画で、現在は自動車や土木資材などの用途で使われています。


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「バイオボランス®」の自動車用フロアカーペット基布(東洋紡提供)




化繊各社の代表的な「秋冬節電対策素材」



(2012年1月掲載) 本文および写真・図(イラスト)の無断転載を禁じます。

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