よくわかる化学せんい

KASEN TOPICS

高性能・高機能化学繊維素材やその用途展開などについてご紹介します。

Vol.10 快適ストレッチ素材

ストレッチ素材に使われる代表的な繊維がポリウレタン弾性繊維(スパンデックス)です。非常に伸縮性に優れ、他の繊維と組み合わせ少量使うだけで身体の動きに合わせて伸び縮みする生地を作ることが可能になります。快適な着心地を求める声が増えるとともに展開アイテムも広がており、アウターやインナー、スポーツウェア、水着、メディカルや生活雑貨など様々な場面で使われています。現在、日本では旭化成せんいの「ロイカ®」、東レ・オペロンテックスの「ライクラ®」ファイバーなどが展開されています。

また、ウレタン系以外の弾性繊維も多く展開されています。スパンデックスとは異なった特徴があり、帝人フロンティア「ソロテックス®」、ユニチカトレーディングの「Z―10®」、クラレトレーディングの「ビューフィット®」などがあります。このほか、東洋紡スペシャルティズトレーディングの「ラクロス™」など糸加工や製織などの工夫により適度なストレッチ性を付与した素材なども開発されています。

疲労回復にも効果 旭化成せんい「エラクション・プロ®」

旭化成せんいの「エラクション・プロ®」は、同社のスパンデックス「ロイカ®」を使ったストレッチ生地です。同社のコンプレッションウェア用のストレッチ素材群「エラクション®」シリーズの頂点商品に位置づけられ、スパンデックスを使うとともに特殊な編み構造と加工によって高いストレッチ性能を実現しました。

「エラクション・プロ®」は縦横の双方向にストレッチバランスが優れているのが特徴で、通常の生地に比べると縦方向に2倍、横方向に1・5倍伸びます。例えばコンプレッションウェアにこの素材を使った際には、身体の大きな動きに合わせて安定した着圧を確保でき、運動中の身体への負荷低減や疲労回復にも効果があることを確認しています。

スパンデックスとの相性に優れる 三菱レイヨン・テキスタイル「A.H.Y. ®」

三菱レイヨン・テキスタイルの「A.H.Y.®」は常圧カチオン可染タイプのポリエステル繊維です。「A.H.Y.®」自体はストレッチ素材ではありませんが、スパンデックスとの相性がよく、様々なストレッチ素材に使用されています。カチオン染色することで、スパンデックス複合テキスタイルにおいても、通常のレギュラーポリエステルに比べて優れた染色堅牢性を実現できるからです。

また、通常のポリエステルは、130℃レベルの高温・高圧下で染色されますが、常圧可染タイプの「A.H.Y.®」は100℃レベルでの染色が可能です。このため、高温・高圧下での染色に適さない繊維素材との複合の相性にも優れています。カチオン染料は繊維と化学的に結合しますので、一般的な分散染料による染色に比べて染色堅牢性を維持しながら鮮やかな色の表現も可能です。「A.H.Y®」は糸自体が柔らかくしなやかという特長もあり、スポーツ用途でのストレッチウェアなどの強い締め付け効果の必要な製品でも、着心地の快適性を高めます。

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「A.H.Y®」(三菱レイヨン・テキスタイル提供)

バネのような分子構造 帝人フロンティア「ソロテックス®」

帝人フロンティアの「ソロテックス®」は、ソフト感や適度なストレッチ性などが特徴のPTT繊維(ポリトリメチレンテレフタレート)です。PTT繊維は、バネのような分子構造を持ち、それによって適度なストレッチ性能を実現します。適度な伸縮性に加え、伸縮バック性にも優れるなどの特徴もあり、ファッション衣料やスポーツ、ユニフォームなど幅広いアイテムに使用されています。

また、同社は長繊維だけでなく短繊維でも展開しており、寝装の中わたなどにも使われています。例えば枕では優れた形態回復性、へたりにくさ、適度な反発性などの特徴を生かし、人気を高めているアイテムの一つです。
なお、ソロテックスに使われる原料の一部は植物由来であり、環境配慮型素材としての特徴もあります。

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分子構造モデル比較図

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洗濯10回後の寸法安定性試験

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ベッドパッド

「ソロテックス®」(帝人フロンティア提供)

縦横に伸縮するストレッチ織物 東レ「フレックススキンプラス®」

東レは東レ・オペロンテックスのスパンデックス「ライクラ®」ファイバーと、3GT繊維(ポリトリメチレンテレフタレート)「T400®」の2種類の弾性繊維を使って幅広くストレッチ素材を展開しています。スパンデックスを使った素材ではコンプレッションウェアなどに展開されている「プログレスキン®」、塩素による色落ちに強く水着などに展開されている「トリンティ®」などがあります。

また、3GT繊維を使ったストレッチ素材では「フィッティ®」「フィールフィット®」「フレックススキンプラス®」を展開しています。このうち「フレックススキンプラス®」は縦横の双方向に伸縮する織物で運動時にも動きやすく、ニットが使われることが多かったスポーツのトレーニングシーンでも多く使われています。織物ですので、トレーニングウェアにした際にはジャージよりも軽量性に優れるとともに、きれいなシルエットを保持できるという特徴を出すことができ、ジャージやウインドブレーカーとは違うアイテムとして注目を集めています。

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「ライクラ®」

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「T400®」断面

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「フィールフィット®」

(東レ提供)

2種類のポリマーを複合 ユニチカトレーディング「Z―10®」

ユニチカトレーディングの「Z―10®」は、2種類の異なるポリマーを複合させたサイドバイサイド型ポリエステル繊維です。繊維を捲縮させてスプリング状にすることでストレッチ性を出しており、同社では加工工程の熱でクリンプが発生する潜在型捲縮性能と糸加工によるクリンプ付与技術の組み合わせにより、ストレッチ性能を高めています。生地にした際に反発感のある風合いが出せるなどの特徴もあります。

展開用途は幅広く、レディス衣料やスポーツなど様々な場面で使用されています。また、繊維のスプリング形状に加えて伸縮性ポリマーを使ってさらにストレッチ性能を高めた「ムーヴフィット®」など商品幅も広がっています。

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「Zー10®」(ユニチカトレーディング提供)

PBT繊維を使ったストレッチ素材 クラレトレーディング「ビューフィット®」

クラレトレーディングの「ビューフィット®」は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)とポリエステルのサイドバイサイド型コンジュゲートヤーンです。柔軟な伸縮性とソフトな風合いが特徴で、レディス衣料やスポーツなど幅広い用途に使用されています。ナイロンタッチの軽い風合い、染色堅牢度や耐久性に優れるなどの特徴もあります。アウターだけでなく、スポーツやインナー、水着など幅広い分野で展開しています。

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「ビューフィット®」(クラレトレーディング提供)

ニットのようなストレッチ織物 東洋紡スペシャルティズトレーディング「ラクロス™」

東洋紡スペシャルティズトレーディングの「ラクロス™」は、丸編みニットのような表面感を持つ織物です。糸と織り方の工夫により、スパンデックスを使わず、織物でもスポーツの競技シーンに使えるストレッチ性を実現しました。

ニットではなく、織物にすることのメリットの一つは軽量化です。また、ニットを軽量化する際には生地を薄くしますが、生地が薄いと衣料品にした際にしっかりしたシルエットが出しにくくなる問題もあり、織物にすることでそれを解決することができます。 「ラクロス™」は、これらストレッチ性・軽量性に加え、吸汗速乾性、紫外線遮蔽性などの特徴も持っています。

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「ラクロス™」の特長データ(東洋紡スペシャルティズトレーディング提供)

「快適ストレッチ素材」




(2012年12月掲載) 本文および写真・図(イラスト)の無断転載を禁じます。

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