日本化学繊維協会と炭素繊維協会は
2014年7月1日に統合しました

(E U) EURATEX、「ReHubs」を発表

2020年12月01日
日本化学繊維協会

環境

EURATEX、「ReHubs」を発表

 このほど欧州繊維産業連盟(EURATEX)は、繊維廃材問題をアップサイクルしビジネスチャンスに変えるために、会員団体・企業とともに、その対応策となる「European Textile Recycling Hubs」(ReHubs)を立ち上げた。
 EURATEXによると、2019年の欧州での繊維品の消費量は、1,070万㌧、そのうち、EUで回収される廃棄繊維製品は280万㌧である。現在、欧州委員会では今後4年以内に廃棄繊維製品の分別回収の規制が導入され、適宜リサイクル、加工を進める予定である。(国ベースでは規制2022~23年に実施が予定)。その結果、2025年の欧州域内で回収される廃棄繊維製品は420~550万㌧まで増加する見通しである。
欧州委員会は、こうした繊維廃材の回収や分別、リサイクルを大規模に、かつ総合的に展開していかなければ、大規模な環境・経済問題に直面する恐れがあると指摘している。
 EURATEXの推定によると、2019年の欧州の繊維産業のサプライチェーンでは、最終繊維製品消費量は1,070万㌧(国内生産580万㌧、輸入650万㌧、輸出160万㌧:輸入比率61%、1人当たりの繊維消費量は24kg/人)であるが、回収された繊維製品は280万㌧である。一方で年間400万㌧以上の繊維製品が余剰品として扱われ、結果的に焼却、埋立てなどにより消滅しているとみられている。
 2019年の回収された繊維製品(280万㌧)のほとんどは、使用済み繊維製品(ポストコンシューマー繊維製品)である。一方で、製造工程中の繊維くずについては、加工が簡単なこと、コスト面での回収、仕分け、リサイクルの優位性があることから一定の重要な役割を果たしている。
 280万㌧の回収された廃棄繊維製品のほとんどは衣類である。そのうちの65%(185万㌧)がEU域内で分別され、残りの98万㌧が域外に輸出されている。EUに残った185万㌧のうち、50~60%(約100万㌧)が中古衣類としてリユースされ、10~15%(約23万㌧)がワイプ/清掃用の低コスト製品に転換され、約10%(約18万㌧)が焼却か埋め立てによる廃棄、残りの15~30%(約41~42万㌧)がリサイクルされている。リサイクルされている41~42万㌧のうち、大半がダウンサイクル(素材の価値が損なわれる方向で再利用すること)であり、自動車用の防音、断熱材などに用いられている。新たな衣類へのリサイクルといったより高付加価値分野へのリサイクルの比率はまだ小さい。このようなリサイクルが可能となるケミカルリサイクル技術はまだ初期段階である。
  EURATEXが今回ReHubsを立ち上げたのは、欧州域内の繊維廃材をアップサイクルすることで、環境と調和のとれた大規模な素材ビジネスの流れを生み出すことが出来るとしている。
 ReHubsを運用することで、大量の繊維廃材を「規模の経済」により、ビジネス創出が可能であり、現状のリサイクルに必要なコストや、新技術(ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルなど)への投資額を合理化することも可能となる。また、主に中小企業で構成されている繊維のバリュー・チェーンの繊維から繊維へのクローズド・ループの実現や、域内の自動車産業等の他産業との協力を進めていく上でも有益であるとしている。
 また、ReHubsは、使用済み原材料から構成される新規市場を欧州域内に生み出すことになり、廃棄物処理コストの削減にも有効となり、製品のリサイクルやエコデザインに関する知識が新しく広がっていくことで繊維産業のバリュー・チェーンの協力効果が期待できるとしている。
 ReHubsの取り組みでは、新たな雇用創出も期待されており、推計では、回収・分別・リサイクルされる繊維量1,000㌧ごとに約20人分の新規雇用が生まれると予想され、最終的にはEU域内で12万人の雇用が生まれる計算である。
 今回のEURATEXのReHubs戦略は、欧州委員会の「Green Deal」や「Circular Economy Action Plan」に定められた目標を達成するために必要なのは変革であり、繊維生態系の変革の実現に向けた具体的なパートナーシップの一歩となるであろうと評価している。