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(オーストリア) Lenzing、2020年版のサステナビリティレポートを発行

2021年05月10日
日本化学繊維協会

環境

Lenzing、2020年版のサステナビリティレポートを発行

 大手セルロース繊維メーカーのLenzing Groupが、4月22日の世界アースデイにあわせて、同社のサステナビリティレポート2020を発表した。同報告書の概要は以下の通り。
 Lenzingは「コロナウイルスとの闘いが最優先事項であるときでも、気候中立と持続可能性を推進することに焦点を合わせた。これらは、人類にとって長期的な重要課題であり続けるため、気候保護、資源効率、生物多様性などの生態学的課題に効果的な対処をすることが、戦略原則の不可欠な部分であり、将来に対する責任であると考えている。」と述べている。
 Lenzingは、科学的知見に基づいた目標達成に向け、気候変動問題の克服に積極的に貢献している。2019年には、2030年までに製品1トンあたりの温室効果ガス排出量を50%削減することにコミットした。また2050年までに気候中立になることを最優先の目標として掲げた。ブラジルとタイでの2つの主要プロジェクトの実施は重要である。タイの工場では、CO2ニュートラルサイトとして持続可能なバイオ由来のエネルギーを供給している。ブラジルの発電所は、発電電力の50%以上を再生可能エネルギーとして公共送電網に供給し、ネットのCO2バランスを実現している。
 Lenzingの本年のもう一つの重要な成果は、カーボンニュートラルのための世界的な枠組みであるThe CarbonNeutral Protocolに基づき認定された初のカーボンゼロのTENCELTM繊維の発売である。2021年6月には、初のカーボンゼロ認定のリヨセル繊維を販売予定である。
 また、気候保護と資源保護において重要なサーキュラーエコノミーについて、繊維産業全体の基準を設定している。繊維廃棄物の世界的問題の解決策を提供するために、資源効率を高めるREFIBRAリサイクル技術を開発している。REFIBRAは、綿衣類製造時のくずや使用済みの衣類からのから繊維廃棄物をリサイクルして、商業規模で新しいリヨセル、モダル繊維を製造できる世界で唯一の技術である。
 同社は、2020年に新しい持続可能性目標を設定し、このビジョンを実現するための対策を実施している。同社は、2025年までにサプライチェーンと協力して、可能な限り生産循環できるように最大50%のリサイクル素材を含む短繊維を工業規模で製造することを目指している。」とCEOのStefan Doboczkyは述べている。
Lenzingは、サプライチェーンの透明化は環境保護と同様に繊維産業にとって大きな課題であるとして、TextileGenesisとの協力でブロックチェーン技術をベースとした革新的なソリューションを提供している。この技術は、ファイバーから流通の段階までのトレーサビリティを可能にするため2020年に開始された。
 2020年、同社はサステナブル分野での業績に対し、数々の賞を受賞した。
・初めて非営利環境団体CDPによる評価を受け、気候と森林のカテゴリーで2倍の「A」スコアを獲得した最初の新規参入企業となった。
・サステナブル分野で最も高く評価されている格付機関の1つであるISSESGでは、サステナブルレートが「C+」から「B-」にランクアップした。これは、「紙と林産物」のカテゴリーで最高ランクである。この結果、企業上位10%に位置付けられることとなった。
・カナダの森林保護NGOのCanopyのHot Buttonランクング(世界の主要なセルロースメーカーにおける、森林保護への取組み、代替品活用、木材パルプの調達方針、情報開示、第三者認証、原生林地域での事業運営などの観点で評価)で初めて最高のカテゴリーを達成した。過去数年間にわたる継続的なサステナブル調達と資源効率に関して特に評価された。
・オーストリアのATXに関する最高の気候報告で権威ある「Building Public TrustAward2020」を受賞した。陪審員は、全体的な気候関連の戦略的調整と明確な目標に対するコミットメントを強調した。
・LENZING™Web技術はAustrian State Prize for Innovationを受賞した。この賞は、Lenzingの業績と、サステナブルイノベーションに基づく成長戦略を表彰するものである。この新しい技術は、繊維と不織布の生産を1つのステップで組合せ、効率、真円度、生態系のサステナブルな面で新しい基準を設定している。
また、Lenzingは、「Naturally positive(自然を積極的に保護する)」をテーマにしたサステナブル戦略で、変化のためのパートナーシップ、循環性の向上、バリューチェーンのグリーン化という3つの戦略原則に沿って運営している。これに基づき国連のSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)にコミットするために、以下の重点分野を定義した。
○持続可能な原材料の調達
○脱炭素化
○責任ある水の使用
○サステナブルなイノベーション
○体系的な変化のための提携
○人々を励まし、力を与える
○コミュニティの福祉の向上