日本化学繊維協会と炭素繊維協会は
2014年7月1日に統合しました

(EU) 11ヵ国、廃棄繊維製品の対応を要請する書簡送付

2021年10月29日
日本化学繊維協会

繊維政策

11ヵ国、廃棄繊維製品の対応を要請する書簡送付

 10月6日、欧州域内の11ヵ国(オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ルクセンブルグ、オランダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン)は、欧州委員会に対し、繊維産業で発生する廃棄繊維製品の規制や対策を、近日公表予定の「繊維戦略」に盛り込むよう要請する書簡を送付したことを明らかにした。同書簡では、繊維産業のバリューチェーン全体に適用されるような「意欲的で包括的な戦略」が必要であると強調している。
 書簡によると、欧州は気候変動に意欲的に取り組んでおり、廃棄繊維製品の対策は、こうした取り組みを達成し、繊維産業が競争力と持続可能性を高めるためにも必要であるとしている。欧州では1人当たりの繊維消費量は平均26kgと高水準である。欧州では、ファストファッションの流行で、繊維製品の使用期間は短縮した結果、毎年1人当たり11kgの繊維製品が廃棄されているといわれている。
 オランダ環境大臣のSteven van Weyenberg氏は「パリ協定の柱の一つが、炭素排出量の削減である。繊維産業は、この目標達成に向けて重要な役割を果たすことができる。EUが意欲的な戦略を示すことで、持続可能な繊維製品が一般化し、清潔で健康な未来に繋がる道を開くことが重要。私たちが他の欧州の国々と力を合わせて、具体的な対策を提案したのはこのためだ」と説明した。
 今回の書簡では、繊維製品の回収・再使用・リサイクルについて、明確で意欲的な目標を設定するように求めている。現在、世界の繊維製品でリサイクルされ新しい繊維製品に転換されているのは1%未満であり、リサイクルされた場合でも、大半は品質が劣化した製品にダウンサイクリングされているという。11ヵ国はリサイクル率の向上のため、 欧州員会に対し、繊維製品の完全リサイクルに向けた調査、およびその特定を要請している。また、衣類の使用期間の長期化を呼び掛けるため有効な方法や、売れ残った衣料品の廃棄を防ぐ方法についての調査も要請している。この他にも、グリーンウォッシング(環境配慮をしているように装いごまかすこと)の防止や、顧客に対して製品がどのように作られたのかを表示するラベルの貼付を義務付けるべきなどを要請している。
 欧州委員会は、2020年3月に公表した循環経済行動計画の中で、繊維産業は、資源を集中的に使用するため、水の使用量では、EUで4番目、温室効果ガスでは第5番目に高い負荷を与えており、EUが循環経済のための行動を進めるには繊維産業への影響に対応することが優先であるとして、数ヵ月以内に包括的な繊維産業の持続可能な戦略が取りまとめられることになっている。