日本化学繊維協会と炭素繊維協会は
2014年7月1日に統合しました

(米 国) SIO、Lenzingのセルロース繊維の生分解性を確認

2021年11月10日
日本化学繊維協会

環境

SIO、Lenzingのセルロース繊維の生分解性を確認

 このほど、カリフォルニア大学スクリプス海洋研究所(SIO)(Scripps Institution of Oceanography (SIO) at the University of California)の研究調査によってオーストリアのセルロース繊維メーカーLenzing Groupのリヨセル繊維が生分解性を有していると確認されたことを明らかにした。
 この研究によって、木質系のセルロース繊維は、使用後(ライフサイクル終了後)、水中において短期間で生分解することが確認された。つまり、木質系セルロース繊維が、化石由来の繊維を代替する優れた材料となることが判明した。
 このSIOの研究は、独立プロジェクトにより実行されたものであり、使用済みの繊維製品、不織布などの投棄が問題となる中、どのような状態が「使用済み」とされているのかについて、理解を深める目的で立ち上げられた。Lenzingは、プレスリリースの中で、SIOは世界有数の伝統ある海洋研究センターであり、世界的に著名な機関であると紹介している。
 この研究では、SIOは、ポリエステルなど合繊製の不織布と、Lenzingのリヨセル繊維、レーヨン繊維などセルロース繊維素材の生分解プロセスを比較した。この比較は、海洋実地や管理されたアクアリウムの中などさまざまな条件下で、具体的なシナリオに従い行われている。この結果では、木質系セルロース繊維が30日以内に完全に生分解した一方で、合繊は、200日以上実質的には何の変化も見せなかった。
 Lenzingは、「Lenzing Groupのビジネスモデルは循環経済を基準にしている。同グループ内で生産した繊維が、使用後に生態系に戻れるよう持続可能な森林で伐採された木材や、素材を効率的に処理する優れた技術を使用している。そして、プラスチックによる環境汚染などの問題に関して人々の意識を高めること、そして繊維産業に対して、リヨセル繊維TencelやEcovero、Veocelシリーズ繊維のように、生分解可能な木質系繊維への切り替えを強く求めていく。」と述べている。
 Lenzingが生産するセルロース繊維の生分解性については、ベルギーのOrganic Waste Systems (OWS)試験所でも試験が行われ、SIOが行った実験結果と同様の結果が確認されている。OWSは、生分解性と堆肥化の試験を行う世界屈指の機関であり、適切な国際基準に従って実験評価を実施した。また、Lenzingは、生分解性製品の認証機関であるTUV Austriaによる認証を獲得したことで、一定の基準に従って設定された期間中に、すべての試験条件(土壌、事業における堆肥化、家庭での堆肥化、淡水、海水)下で、非常に短期間で生分解することが証明されたことも明らかにしている。
 EUでは、2021年7月に発効された使い捨てプラスチック規制を契機に、プラスチック由来の女性用衛生用品や乳児用・家庭用ウェットティッシュなど一部のプラスチック製品および包装材にラベルの貼付を求める基準が確立された。Lenzingは、消費者の啓蒙活動や、より循環性の高い代替材料を提供することで、プラスチックが引き起こす問題対処への歩みを進めたいと述べている。