日本化学繊維協会と炭素繊維協会は
2014年7月1日に統合しました

(中国) 2022年上半期の化繊業況

2022年06月20日
日本化学繊維協会

繊維業況

2022年上半期の化繊業況

 2022年上半期、中国内外の状況は急激に変化、経済発展に影響をもたらした。外部環境では、ロシア-ウクライナ戦争により、サプライチェーンのひっ迫、エネルギー価格の上昇が発生、インフレ圧力が増した。内部環境では、中国国内における新型コロナの感染拡大により、生産、流通などが混乱し、消費が下方圧力に直面、国内需要に大きな影響をもたらしている。このほか、人民元の為替レートの変動などもあり、2022年上半期の中国の化繊業界は、高コスト、低需要、高在庫、低収益などの問題に直面している。
 2022年第1四半期、化繊業界の稼働率は比較的高く、生産の成長率は高い状況であった。2021年第4四半期に化繊業界の多くの企業で減産、定修を行ったこともあり、1~2月の化繊業界の稼働率は高水準で推移、春節後の3月は、さらに稼働率が上がった。
 しかし、3月中下旬以降、中国国内の新型コロナ感染拡大による封鎖措置のもと、物流、運輸が停滞、その影響が卸売、小売にも及び、サプライチェーン全体で稼働率が下落した。
 4月、新型コロナの感染拡大がさらに加速、化繊業界の稼働率が大幅に低下し、紡糸から加工糸、織布工場、染色工場でも減産、生産停止が顕著にみられた。
 5月、新型コロナ感染が収まるに伴い、企業の出荷、市場取引も回復したが、前年同期と比べるとまだ弱含みであり、工場の製品在庫圧力も大いため、化繊工場の稼働率は上がらない状況にある。このため2022年上半期の化繊生産量はマイナス成長に転じる可能性もある。
 世界の原油価格は、2020年下半期以降上昇に転じ、その後エネルギー危機が激しくなり、特にロシアとウクライナの戦争後、原油需給がひっ迫し、原油価格は100㌦/バレルを突破、化繊業界全体に巨大なコスト圧力をもたらした。
 コスト上昇と同時に、化繊の需要は弱まっている。2022年の年初、化繊企業は注文不足問題に直面、3~4月の新型コロナ感染拡大後は国内のアパレル販売が低迷し、また、感染抑制措置などから繊維品輸出が制約を受けた。
 在庫水準については、2022年初以来、化繊企業の多くは高水準にある。6月初旬の規模以上企業の製品在庫日数は大幅に増加、中央値は1週間以上となっている。
 在庫圧力の一方、化繊企業は資金繰り圧力に直面している。一時期、一部企業は投げ売りがみられ、個別企業ベースでみると、キャッシュフローのリスクが存在している。
 化繊メーカーの収益は、原料価格の大幅上昇、需要不足、高水準の在庫から、メーカーの価格交渉能力が弱まり、収益は縮小している。合繊価格は、2022年初からを比べると、原油価格の上昇率が50%以上に対して、ポリエステル長繊維、短繊維価格の上昇率は20%程度、ナイロン長繊維の上昇率は10%以下であり、製品価格への転嫁が進んでいない。さらに川下製品の上昇率は更に小さく、加工糸メーカー、織布メーカーなどでは赤字企業の割合は増加している。
 人民元安の影響では、原料輸入の比率が高い品種でコスト上昇をもたらした。例えば、レーヨン繊維原料の溶解パルプ、ポリエステル原料のPXなどにおいて原料コストの大幅上昇が起きている。
 2022年、化繊企業は原料コストの上昇、新型コロナの感染拡大によって受注が打撃を受け、需要が停滞、人民元為替レートの変動など多くの影響を受け、経営圧力は大きい。そのうち、最大の問題は注文不足である。このほか、物流運輸の問題、感染対策なども関連する。最近、中国政府が景気刺激策を頻繁に打ち出しており、需要の回復も期待されるが、しばらく時間がかかる見通しである。