日本化学繊維協会と炭素繊維協会は
2014年7月1日に統合しました

(中国) 2022年上半期の化繊業界の業況

2022年08月30日
日本化学繊維協会

化繊業況

2022年上半期の化繊業界の業況

 

 2022年上半期の中国の化繊業界は、国内での新型コロナウイルスの再燃、海外での紛争など地政学的リスクの影響に直面した。こうした中、原油価格は高水準で推移、川下需要は引続き低迷したことで、化繊業界全体の生産および稼働状況は厳しいものとなった。一方で中国政府の「安定した成長」政策と各種の政策支援により、化繊産業の主要な指標はプラスを維持した。
(1)化繊生産
2022年の化繊生産の前年比伸び率は、3月以降鈍化している。2022年上半期の化繊生産は前年同期比0.45%の微増、3,367万㌧となった。
化繊需要は、最終商品の需要の落ち込みや高い織布在庫の影響から低迷が続いた。全体として高水準の在庫であったが、ポリエステル短繊維、レーヨン短繊維の在庫は比較的低水準であった。
(2)市況
2022年の原油価格は総じて高値で推移、WTI先物価格は3月上旬と6月上旬に2度120㌦を突破した。その後、7月末に94㌦と、高値から20%以上下落した。ポリエステル繊維等の化学繊維の市況も概ね同様の傾向を示した。高位の原油価格は化学繊維価格に一定のサポートとなった。川下需要の低迷から、化繊企業はコスト転嫁が困難となり、化繊価格の上昇率は川上原料に比べ小さく、化繊企業の利益が圧迫された。
(3)輸出入
2022年上半期の主要化学繊維品輸入は前年同期比37.6%減の21.2万㌧となった。これは国内需要の低迷を反映している。同期間の主要化学繊維品輸出は同2.8%増の266.6万㌧となった。
(4)最終市場
最終消費は、新型コロナの発生により低迷した。5月以降は、新型コロナウイルスの流行が抑制されたこと、中国政府の消費促進策により、回復傾向となった。2022年上半期の衣料品、靴、帽子、ニット製品の規模以上企業の売上は前年同期比6.5%減であったが、1~5月に比べ1.6ポイント改善した。2022年上半期のオンライン衣料品販売高は前年同期比2.4%増、月ベースでは4月にマイナス成長からプラス成長に転じた。
外需市場は着実に成長した。2022年上半期の繊維品輸出額は前年同期比11.7%増の1,564.9億㌦となった。輸出のうち、紡織品は同11.3%増の763.2億㌦、衣類は同12.0%増の801.7億㌦であった。輸出先のうち、
地域包括的経済連携(RCEP)加盟国は、同13.7%増の455.7億㌦とRCEPの発効が輸出にプラスに貢献している。
(5)化繊業界の業績
2022年上半期の化学繊維産業の営業収入は前年同期比10.6%増の5,367億元、総利益は同51.2%減の164億元となった。業界の損失は企業の比率は33.54%に達した。
(6)固定資産投資
2022年上半期の化学繊維産業の固定資産投資は、前年同期比31.9%増となった。
(7)2022年下半期の見通し
コスト面:下半期の原油価格は、地政学的問題や米国の利上げの影響もあり、不確実性は残るが、弱含みとなる可能性が高まっている。原油価格が下落すると、化繊企業の原料コスト、エネルギーコストに対する圧力は低減する見通し。
消費面:下半期、中国政府の一連のマクロ政策の効果から、繊維内需は緩やかな回復が見込まれる。輸出は、安定した成長を維持する見通し。