日本化学繊維協会(会長 大矢 光雄 東レ株式会社 代表取締役社長 社長執行役員)では、本日11時より第707回 本委員会を開催しました。
主要議題およびその概要は以下の通りです。
1. 正副会長の交代
2022年度の内川 会長、川原 副会長、クイーン副会長が退任し、2023年度会長に大矢 光雄 東レ株式会社 代表取締役社長 社長執行役員、副会長に工藤 幸四郎 旭化成株式会社 代表取締役社長兼社長執行役員、専任副会長に富𠮷 賢一 理事長が選任されました。
任期は2024年6月30日までの1年間です。
2. 繊維屑測定試験方法の国際規格制定と市販品評価事業について
「日本化学繊維協会のサステナビリティ対応方針(2021年7月)」に掲げた、「資源循環」や「環境負荷低減」について、2023年度の具体的な検討課題(①再生型リサイクルの拡大、②回収循環型リサイクルの検討、③バイオ化繊の拡大、④マイクロプラスチック問題の対応、⑤化繊産業のカーボンニュートラル取組み、⑥化学物質管理問題や環境負荷物質排出抑制)の報告がありました。
このうち、「マイクロプラスチック問題の対応」については、洗濯時に発生する繊維屑測定の試験方法が5月にISO規格(ISO 4484-3)として制定したことから、2023年度はこの試験方法を用いて、市販繊維製品を幅広く取り上げた繊維屑測定・評価を行い、次の段階で予定している「繊維屑が出やすい製品の対策検討」に活用する目的で、データ蓄積に取り組むこととしております。
3. 2022年度「化学繊維ミル消費量の調査」結果
2022年度「化学繊維ミル消費量調査」結果について、以下の通り、報告がありました。
2022年度の化学繊維ミル消費は、前年度比1.6%減の80.6万㌧、2年ぶりの減少となりました。国産品は2.5%減の37.1万㌧、輸入品は0.7%減の43.4万㌧、国産品、輸入品とも減少しました。輸入品比率は、前年度比1ポイント上昇の54%となりました。
用途別には、衣料用、家庭・インテリア用、産業資材用の割合は、17:51:32となり、前年度と同じ割合でした。
4. 訪欧代表団派遣報告(日仏繊維協力WG)
2021年5月に更新した日仏繊維協力覚書(MoC)に基づく活動として、4月24日~28日の5日間、フランスを中心とする欧州のサステナビリティ動向やユーザー産業を含むクラスターなどの繊維開発動向を調査するため、フランスを中心とする欧州に代表団を派遣しました。
フランスでは、繊維クラスター(テクテラ、ユーラマテリアルズ)とサステナビリティ政策などについて情報交流を行ったほか、今後の協力体制について意見交換しました。このほか、サステナブルファッションアクセレーターやリサイクル関連クラスターなどを訪問し、サーキュラーエコノミーの取組みなどについて情報交流したほか、施設などの見学を行いました。ドイツでは、アーヘン繊維研究所とサステナビリティの取組みなどについて情報交流したほか、研究施設を見学しました。
本調査結果を今後の日仏繊維協力の取組み検討や来年5月に期限を迎えるMoCの更新に向けた議論に役立てていく予定です。
5. 最近の繊維貿易・通商動向
2022年の世界の繊維品貿易について、以下の通り、報告がありました。
2022年の世界の繊維品貿易は、新型コロナ禍からの回復傾向から前年比4%増の約9,400億㌦と前年に続き増加、過去最高水準となりました。
6. 2023年度 日本化学繊維協会活動
以上
2023年度 日本化学繊維協会活動
1.環境認識と基本方針
日本化学繊維協会は、2021年に策定した「中期活動方針2025」において、1)サステナビリティの推進、2)競争力の基盤維持・強化、3)情報発信の拡充の3点を活動の方向性として設定し、それに則って、活動を行っている。
2022年度は、日本繊維産業連盟が公表した「繊維産業における責任ある企業行動ガイドライン」のサプライチェーンへの周知や人権デューディリジェンス取組発表会、「炭素繊維サステナビリティビジョン2050」の公表、繊維リサイクルシステム構築に向けた検討など、環境面・社会面ともにサステナビリティ向上に向けた取組を推進した。また、協会の情報発信については、協会ウェブサイトにサステナビリティコーナーを新設するなど、情報発信WGを中心に消費者や顧客業界への当業界の取組の訴求に努めた。
地政学的な緊張、欧米を中心とした金融不安、資材価格やエネルギー価格の高止まり、人材不足など、業界各社の経営環境に懸念材料が依然として残っている中で、協会は2023年度においても、環境・人権配慮、サプライチェーン強靭化など直面する課題に対応しつつ、持続可能な社会の実現への貢献、日本の化繊産業の競争力の基盤維持・強化に取り組んでいく必要があり、中期活動方針に基づき、以下の活動を推進していく。また、業界各社の事業構造変化等に鑑み、日本化学繊維協会のあり方についても検討していく。
2.2023年度の主な活動内容
1)サステナビリティの推進
① 持続可能な社会の実現に向け、循環経済に資する環境配慮型繊維(リサイクル繊維、バイオ化繊等)の普及を推進する。また、繊維製品の資源循環システム構築に向けた研究、製造・加工工程の開発を加速する。製品による環境負荷低減(マイクロプラスチック対応、GHG排出抑制、環境負荷物質低減)にも引き続き、取り組む。
② 環境配慮型繊維製品普及の観点から標準化(JIS・ISO開発等)による環境性能の見える化やラベル・公共調達制度等の推進を行う。
③ サステナビリティにおける環境以外の活動として、サプライチェーン上の人権問題には、ステークホルダーへの業界ガイドラインの周知、啓発活動、事例の共有を進めることで、会員企業はもとよりサプライチェーン上の関係先の理解を深め、労働環境の改善に貢献する。また、政府で検討されている技能実習制度の見直しに対しても、会員企業間での情報共有を通じて理解を深め、日本繊維産業連盟の意見提出に協力する。
2)競争力の基盤維持・強化
① 化繊業界の競争力を支えるため、福井大学のテキスタイル・サイエンス寄付講義等を通じて、大学や産地等における人材確保やその育成支援を行う。
② 通商政策や環境政策、デジタルトランスフォーメーション(DX)やビジネス動向を含めた海外から情報の収集・調査を行い、新たな技術・ビジネスモデルの開発に資する会員企業間の情報共有等を進める。
③ ACFIF(アジア化繊産業連盟)標準化作業委員会の共同事務局として、各国地域の協調体制を構築するとともに、標準化による先端繊維素材の普及を目指す。
3)情報発信の拡充
① エコプロ展への出展継続やウェブサイト、SNSの活用等により、持続可能な社会の実現に向けた化繊業界の貢献を広く発信する。
② 先端繊維素材拡大には国内外の顧客業界への訴求が重要である。費用対効果を考慮しながら、他業界の展示会、セミナーや、他の業界団体との交流等、機会を探索し、活用する。
4)日本化学繊維協会のあり方検討
① 時代の変遷に伴い、会員企業における化繊事業の位置付けや組織構造は変化してきた。会員各社の現状に応じ、日本化学繊維協会の活動や役割期待を見直し、将来のあり方について検討を深めていく。
5)ACFIF(アジア化繊産業連盟)における活動
① 2024年5月に韓国で開催予定の第14回アジア化繊産業会議について、アジアの化繊産業の持続可能な成長に向けた課題と対応に関する有意義な議論となるよう、会長国として次期会長国と協力して準備を行う。
② また、ACFIFウェブサイトの構築など、情報発信や情報共有についての企画提案を行い、アジア化繊業界のプレゼンス向上やその発展に努める。
6)その他
① サステナビリティやDX、高機能繊維については、欧州との接点となる日仏連携検討会や他の委員会のネットワークを活用しながら、国内外の動向や繊維産業に及ぶ影響等の情報収集を行い、会員各社に共有する。
② 繊維産業や他産業の業界団体・経済団体との連携、協力については、繊維業界の発展に資するような取り組みとなるよう検討し、推進していく。
以上