日本化学繊維協会と炭素繊維協会は
2014年7月1日に統合しました

(英国) プラスチック含有のウェットティッシュの禁止が法制化

2024年05月10日
日本化学繊維協会

環境対応

プラスチック含有のウェットティッシュの禁止が法制化

 英国政府は4月、世界に先駆けプラスチックを含むウェットティッシュを禁止する法律を導入する予定であることを明らかにした。
 環境・食糧・農村地域省(Department for Environment Food & Rural Affairs-Defra)は、禁止令発効に向けた一環として、イングランドの法案を初夏に成立、秋までに北アイルランド、スコットランド、ウェールズもそれに続く予定である。
 プラスチックを含むウェットワイプは消費・廃棄後の過程でマイクロプラスチックに分解され、人体に害を与え、生態系を破壊する可能性があるとの研究結果が報告されており、最近英国全土で実施された調査では海岸から100mあたり平均20枚のウェットワイプが発見されたとの結果報告がある。
 プラスチックを含むウェットティッシュの廃棄物が水環境に入ると、化学的汚染物質がそこに蓄積する可能性があり、それらに遭遇した動物や人間に害を及ぼすリスクが高まる。したがって、プラスチックを含むウェットワイプの供給を禁止すれば、マイクロプラスチックの発生自体を削減、下水処理場に入るマイクロプラスチックの量も減り、結果として海岸や水路の汚染抑制、浄化につながる。
 英国政府がこの法制化に先立ち2023年秋に6週間募集したプラスチック入りウェットティッシュの供給、販売の禁止法案に関するパブリックコメント結果では、禁止法案への同意が回答者の95%と圧倒的な支持が示された。
 英国内の小売業ではこの法制化を念頭にすでに1~2年前からプラスチックを含むウェットティッシュの店舗やオンラインでの販売を中止し、プラスチックを含まない代替商品に置き換える動きが顕在化している。
 なお、今回の法制化では関連する企業に準備時間を与えるため、法案可決から18か月の移行期間が想定されている。また、業界との協議の結果、法案が禁止対象には当該製品の「製造」は除外されたが、政府はその製造業者に対し、すべてのウェットティッシュにプラスチックを使用しないよう働きかける考えである。また、医療用消毒など、使用目的により実行可能な代替手段がない場合には、プラスチックを含むウェットティッシュを引き続き利用できるようにするための除外規定が設けられているが、政府はこれらの免除の必要性を定期的に検討するとしている。
 今回の法制化について、欧州不織布工業会(EDANA)は以下の主旨のコメントを発表している。
・英国のウェットティッシュ業界を代表し、EDANAは特定のウェットティッシュ
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におけるプラスチックの利用禁止に関する英国政府の対応を歓迎する。
・環境中のプラスチックの削減は非常に重要な目標であり、介護、子育て、関連産業など抗ウイルス性など衛生面の機能を有するウェットティッシュを必要とするユーザーへの供給を確保しつつこれを達成する必要がある。
・プラスチックの削減は、英国社会全体における製造業の雇用維持に配慮しながら目標を達成する必要がある。
・近年、英国のウェットワイプ業界は消費者向けワイプに含まれるプラスチックの削減で大幅な進歩を遂げており、現在国内市場で流通する消費者用ウェットワイプの半分以上はすでにプラスチックを使用していない。
・今回の法制化は政府がそれらの状況を熟慮したアプローチに基づいており、業界が雇用喪失や投資の必要に迫られることなく革新的に事業の継続を促すものとし歓迎する。
・英国で事業を展開するEDANA会員企業は、新たな政府規制を遵守し、提案されたスケジュールに沿って、プラスチックフリーの消費者向けウェットティッシュの提供に向けて前進する。
 EDANAには、Essity、Kimberly-Clark、Nice-Pak、Procter & Gamble、Reckitt、Rockline など、英国で事業展開する代表的なウェットティッシュメーカーが加盟している。