日本化学繊維協会と炭素繊維協会は
2014年7月1日に統合しました

(世界) Canopy、「Hot Button 2024」を発表

2024年12月10日
日本化学繊維協会

環境

Canopy、「Hot Button 2024」を発表

 このほど、カナダ森林保護NGOのCanopyが、セルロース繊維メーカーに対する最新の森林保護ランキングレポート「Hot Button 2024」を発表した。
 このランキングは、第三者検証機関の認証完了、森林保護への貢献、代替品活用によるイノベーション、木材パルプ調達方針、サプライヤーへのトレーサビリティ、持続可能な調達、原生林等での事業運営、情報開示のほか、セルロース繊維産業における化学物質や廃水の管理等、様々な観点から点数で評価されており、それぞれの点数に応じて「濃グリーンシャツ」~「薄グリーンシャツ」~「イエローシャツ」~「レッドシャツ」が授与される(最高点は40点)。最高ランクの「濃グリーンシャツ」を獲得するためには、30点以上が必要。
 2024年、「濃グリーンシャツ」から「レッドシャツ」までのいずれかのシャツを獲得した企業は28社。このうちの71%が、2023年から連続での獲得となった。「濃グリーンシャツ」を獲得した企業は8社(下表参照)。
 「グリーンシャツ」以上を獲得した企業の生産が全体の生産に占める割合は、2021年が50%、2022年が53%、2023年が54%と、年々上昇していたが、2024年は53%と微減した。この理由について、Canopyは、買収や、「レッドシャツ」企業の生産拡大を挙げている。
 「Hot Button 2024」におけるCanopyの分析概要は、下記の通り。
・世界のセルロース繊維生産の97.5%(重量ベース)が、「Hot Button Report」に記載されている企業による生産。
・唐山三友化繊等の中国企業が、次世代素材の使用拡大の取り組みにおいて高く評価された。「Next Generation Solutions」の査定項目で、唐山三友化繊が最多の9.5、次いで新郷化繊と宜賓糸麗雅集団が8.5と高得点を獲得した。他にも、前回より高いランクのシャツを獲得した企業等がある。
・Canopyと協働しているセルロース繊維メーカーのほぼ全社が、次世代素材の使用や研究開発を行っており、品質向上やコスト削減、透明性の向上等に取り組んでいる。
・スウェーデンの繊維リサイクル企業Renewcellの経営破綻により、セルロース繊維の供給が危ぶまれたものの、その後、スウェーデンのサステナブル素材メーカーBiosorbeや、スウェーデンの投資会社Altorが、Renewcellの工場等の資産を買収したことにより、Renewcellは新会社
「Circulose」として再始動することとなった。Circuloseは、2025年に生産をフル稼働させる予定。
・2024年、14社のセルロース繊維メーカーが、DNAマーカー等の追跡システムを導入した。これにより、各社のセルロース繊維が最終製品として加工されるまでの追跡が可能になった。
・2024年、世界のセルロース繊維メーカーの78%が、生物多様性条約(CBD:Convention on Biological Diversity)に署名する等、自然保護への取り組みを行った。
・2025年、「Hot Button」の発行は10年目を迎える。Canopyは、今後も引き続き、セルロース繊維の生産に関するソリューションを総合的に主導する活動「CanopyStyle」等により、セルロース繊維メーカーの取り組みを支援する。

Hot Button 2024の濃グリーンシャツ獲得企業

 Canopyは、2030年までに、世界の森林伐採を30~50%減らすことや、世界の全ての古代原生林・絶滅危惧種の原生林を保護することを目標としている。気候変動や生物多様性の危機といった環境問題へ取り組むためには、原生林を保護しなければならないと考えており、サステナブルな社会実現に必要な要素として、3R(削減、再利用、リサイクル)への取り組みや、廃棄物を活用した次世代素材の開発を挙げている。Canopyの主な活動として、「CanopyStyle」のほかに「Pack4Good」が挙げられる。「Pack4Good」活動は、紙製包装材のサプライチェーンにおいて、古代原生林・絶滅危惧種の原生林を使用しないための活動。