化繊景況
2024 年の化繊業界業況
中国化繊工業協会(CCFA)によると、2024 年は、第14 次五ヵ年計画(2021~25 年)の目標を実現する重要な1 年であり、改革を深める目標を定めるための重要な1 年であった。2024 年は、中国経済は全体として安定の中で前進し、高品質発展は確実に進み、中国式の近代化は堅実な歩みを進めた。こうした背景の下、化繊業界は成長を実現、主な指標はプラスに転じた。中でも、業界の平均稼働率は高水準にあり、生産も比較的速い成長を遂げた。輸出圧力が高まる中、化繊企業は積極的に海外市場を開拓し、輸出はプラス成長を実現した。経済収益は前年比で好転し、年間の売上は1 兆元以上の規模を維持した。
2024 年の化繊業界の平均稼働率は2023 年を上回り、特にポリエステル長繊維、ナイロン長繊維の平均稼働率はともに90%以上となった。一方で、高い稼働率は在庫増を招き、収益は縮小、加えてオフシーズンの需要は弱まったことで、一部のポリエステル企業では赤字となった。
高水準の生産能力と高い稼働率から、2024 年の化繊生産量は速いスピードで拡大した。CCFA によると、2024 年の化繊生産量は前年比8.8%増の7,475 万㌧となった。そのうち、ポリエステル長繊維とスパンデックスの生産の伸びはともに2 桁増、ナイロンは6%増、レーヨン短繊維は6%増、リヨセル繊維は27%増であった。
国家統計局によると、2024 年の1 人当たりの衣料品消費支出は前年比2.8%増、規模以上企業のアパレル、靴・帽子、ニット製品類の商品小売額は0.3%増とともに伸び率は2023 年より下がった。また、インターネット小売額(衣料品)は1.5%増と伸び率は前年より9.3 ポイント下落した。
繊維品輸出は、米中貿易摩擦のリスクから、一部企業は第四半期に「駆け込み輸出」をしたこともあり、プラス成長となった。2024 年の中国の繊維品輸出額は前年比2.8%増の3011 億㌦、そのうち、紡織品は同5.7%増の1,420 億㌦、アパレル輸出額は同0.3%増の1,591 億㌦であった。米国、EU、アセアン向けは好調であったが、日本、トルコ、ロシアなどはマイナス成
長であった。
化学繊維の川下分野をみると、化繊紡績糸、化繊短繊維織物の生産は前年比8.2%増、3.4%増であった。川下の主要業界(加工糸、織機)の稼働率は2023 年と比べ上昇した。
2024 年の化繊輸出は前年比2.2%増の665 万㌧、回復・成長基調を維持した。インド向け輸出は、2023 年10 月に、インド政府がポリエステル長繊維糸に対してBIS認証を実施したことで2024 年は減少した。
2024 年の化繊業界の収益はプラスとなった。化繊業界の売上高は前年比5.7%増の1 兆1,666 億元、利益総額は同33.6%増の358 億元であった。営業利益率は3.07%と低水準であるが、前年よりは上昇した。赤字企業の割合は23.12%と前年より2.4 ポイント縮小した。
業界別にみると、ポリエステル、ナイロン、セルロース繊維業界の利益は2前年と比べて大きく改善した。ポリエステル業界は、下半期に回復した。ナイロン業界は、アウトドア、スポーツ分野での旺盛な需要が貢献した。一方、スパンデックス業界では利益は大きく減少した。
2024 年の化繊業界の固定資産投資額は前年比4.7%増と前年のマイナスからは回復した。新規増加生産能力は、2024 年のポリエステル繊維の新規稼働は196 万㌧とこれまでに比べ供給圧力は緩和した。
2025 年は、繊維・アパレルの中国国内販売は引続き圧力を受けながら安定的に推移する一方、輸出環境は大幅に悪化する見通しである。