日本化学繊維協会と炭素繊維協会は
2014年7月1日に統合しました

ナンバー「化学せんい」は、リサイクルできるの?

近年、限りある資源を大切にする様々な取り組みが行われています。この資源を有効に活用する方法としてリユース、リデュース、リサイクルがあります。リユースとは、再使用のことで、せんい製品は昔から古着として、またリフォームして再使用されていました。リデユースとは、廃棄物を少なくするという意味で、せんい製品の製造工程で出来るだけ廃棄物を少なくするような取り組みです。リサイクルとは「作って、使って、集めて、また作る」というサイクルを繰り返すという意味であり、例えば新聞紙などを溶かしてもう一度再生紙として使うことをいいます。せんい製品のリサイクルには次のような方法があります。このうち、原料に戻すケミカルリサイクルと呼ばれるリサイクルができるのが化学せんいの大きな特徴です。

せんいとは

自然の中にある“せんい”を“天然(てんねん)せんい”といいます。
“天然せんい”には、植物である綿花の種の周りの“せんい”(木綿((もめん))といいます)”や、羊の毛(羊毛といいます)などがあります。
また、虫である“蚕(かいこ)”の“まゆ”から取り出す絹などがあります。

技術 概要
ケミカル・リサイクル
(原料に戻す)
合成せんい(ポリマー)を化学的に分解し、原料(モノマー)まで戻すリサイクルをいいます。ナイロン6やポリエステルでは技術が確立されています。
マテリアル・リサイクル
(材料のままで利用する)
ウエス:古着などを裁断して、布状にばらし、雑巾や工場の油拭き用布として利用する方法です。
反毛(はんもう):古着などを細かく裁断して、さらに無数の針で引っかいて、布からせんいをわた状にほぐしたもので、フェルトなどに利用されます。
再溶解:合成せんい100%の場合には、加熱して溶かし、プラスチックなどの成形品の原料として利用する方法です。
サーマル・リサイクル
(熱源として利用する)
他の可燃ゴミと一緒に焼却して、発電などに利用します。
金属製のボタンやファスナーなどは取り除き、少し熱を掛けて固めて固形燃料化して、石炭の代わりにボイラーの燃料として利用します。
セメント工場などの燃料として利用します。
合成せんい100%の場合には、熱を掛けて、油に戻して灯油などの代わりの燃料として利用することが出来ます。
高炉原料化 溶鉱炉に用いるコークスの代わりに用いる方法です。

ケミカルリサイクル

ユニフォームを中心に、衣料製品の表地や裏地などのすべてをナイロン製やポリエステル製にして、回収後にケミカルリサイクルするリサイクル企画が数社で実施されています。ポリエステルの場合には、回収され、合成せんい工場に送られ元の原料であるDMT(ジメチルテレフタレート)に戻し、ポリエステルせんいの原料として使用されます。ナイロンの場合には、同じく、回収して、合成せんい工場で、元の原料であるカプロラクタムに戻してナイロンせんいの原料として使用されます。
ケミカルリサイクルの場合には、同一素材の衣料品のみを大量に集めて処理する必要があるため、これの効率的な回収システムを作ることが必要です。

ケミカルリサイクル

マテリアルリサイクル

化学せんいの場合には、一般に反毛(はんもう)してフェルトにし、自動車の防音材などに使われます。一方、ユニフォームなどでポリエステル製衣料品の場合には、ポリエステル製のボタンやファスナーなどプラスチックの成型品用途に使用されることもあります。しかし、この樹脂として使用する場合には用途が限られており、今後、新しい用途を開発することが必要です。

サーマルリサイクル

化学せんい会社では、せんい製品の廃棄物から金属などを取り除いて、自分の工場で使用する石炭ボイラー(発電したり、蒸気をつくるためのボイラー)に燃料として利用するサーマルリサイクルの取組みを行っています。

ペットボトルリサイクル

ペットボトルなどの容器包装の回収・資源化が法律で義務付けられています。ペットボトルは、ポリエステルせんいと同じ原料(ポリエチレンテレフタレート=PET)で作られており、回収されたペットボトルから再生した原料を使って、ポリエステルせんいを作ることができます。これが再生ポリエステルせんいです。このように化学せんいは、色々な方面からリサイクルに取り組んでいます。

回収ペットボトルからポリエステルせんいができるまで 回収ペットボトルからポリエステルせんいができるまで