日本化学繊維協会と炭素繊維協会は
2014年7月1日に統合しました

ちょっと変わった繊維
スマートテキスタイル

エレクトロニクス分野で活躍 ~ウエアラブル、ロボットまで繊維技術生きる~

化繊業界はこれまでの知見を生かし、新市場を開拓してきました。炭素繊維は航空機を大きく変える役割を果たしました。自動車をはじめとする各産業界においても高性能繊維に注目が高まっています。その一つにエレクトロニクス分野があります。技術力を生かして、ウエアラブルや電線代替など様々な素材が生まれています。

東レ ~NTTとの共同開発~

IT機器を「持つ」のではなく、「身に着ける」ウエアラブルに対応した繊維素材の開発が進んでいます。手で操作せずに、センサーを使って身体の様々な情報を取得するウエアラブル機器。腕時計など様々な形態のデバイスが登場していますが、そのセンサーに繊維の技術が生かされています。

東レが日本電信電話(NTT)と共同開発した機能素材「hitoe®(ヒトエ)」はその1つです。hitoe®はNTTが有する繊維導電化技術と、東レのナノファイバーと繊維加工技術を融合し開発した電極材です。導電性高分子をナノファイバーの細かい空隙に高含浸する特殊コーティングにより耐久性に優れ、心拍数・心電波形などの生体信号を高感度に検出し、生体情報を取得できます。

  • 「hitoe®」の生地
  • ナノファイバー断面(繊維径700nm)

すでにゴールドウインが「C3fit(シースリーフィット)」ブランドで、ウエア型トレーニングデータ計測用デバイス「IN‒pulse(インパルス)」シリーズとして商品化し、2014年12月から販売しています。「C3fit IN‒pulse」はNTTドコモが展開する専用のトランスミッター「hitoe® トランスミッター01」と専用アプリ「Runtastic for docomo」を組み合わせることで、ランニングなどのスポーツに取り組む際のパフォーマンス向上に役立てるものです。また、東レは日本航空、NTTコミュニケーションズとともに、hitoe®とIoT(モノのインターネット)を活用した、作業者の安全管理システムの共同実証実験に取り組んでいます。さらに中国の青島即発集団、NTT、中国科学院とは、中国展開に関する意向書を交わし、16年に青島即発集団が開設する高齢者施設で東レが開発する衣服による実証実験を行い、次の段階で高齢者見守りサービスの事業化も検討しています。

  • 「hitoe®」を使用した作業者安全管理ウェア(メッシュ正面)
    (東レ提供)

帝人 ~ポリ乳酸と炭素繊維でウエアラブル 西陣織の技術を使った電極材も~

帝人もポリ乳酸繊維と炭素繊維を使用することで、ウエアラブルセンサーとして使える圧電ファブリックを関西大学と共同開発しています。ポリ乳酸繊維は曲げることで電荷・電圧が発生します。電極の炭素繊維を経由してこれを検出するのが圧電ファブリックの仕組みで、センサーや駆動体といったウエアラブルデバイスへ活用を進めています。

  • 圧電ファブリックの原理
    (帝人提供)

生地そのものがセンサーなどの役割を果たすため、柔軟性や屈曲性を生かして平面から曲面・立体構造まで様々な形状、サイズに対応可能という特徴があります。体動や圧力感知のほか、手術や介護の遠隔医療、伝統工芸など職人技の可視化に役立つ可能性を秘めています。将来的にはカテーテルの遠隔操作や音の出るカーテンといった駆動体としての展開も構想もあります。

  • 人が身に着けた生地の動きを感知して、
    ロボットに人間と同じ動きをさせる実験(帝人提供)

また、グループ会社の帝人フロンティアは京都大学医学部付属病院、京都高度技術研究所(ASTEM)と共同で西陣織の技法を用い、着用するだけで心電測定が可能なウエアラブル電極布を開発しています。西陣織の技法を用いることにより、1本の導電糸を電極・導線として使用します。身体に巻くことでウエアラブル電極布とし、素早く適切な12誘導心電計測が可能です。

救急用12誘導心電計測布(左:外装面/右:電極面)(帝人提供)

  • 救急用12誘導心電図を使用した計測テストの様子
    (帝人提供)

東洋紡 ~フィルム状の導電フィルムを活用 伸縮性があり、生地に熱圧着~

東洋紡は生体情報計測ウエアに適した機能性素材「COCOMI®」を開発しています。伸縮性を持つ独自の導電材料を使ったフィルム状の機能性素材で、生体情報計測ウエアのセンサー用電極・配線材としてスポーツウエアやメディカル用途を念頭に、展開を進めています。

COCOMI®はフィルム状のため厚さが約0.3ミリと薄く、伸縮性に優れるほか、電子材料向けに展開する導電性ペーストが電気をよく通し、熱圧着で生地に簡単に張り付けができます。

材料そのものの導電性の高さと、同社の「感覚計測技術」を利用した電極位置の最適化が高精度の生体情報収集につながるほか、伸縮性に優れるため、体の動きに対する追随性が良く一般衣服のような自然な着心地に近くなります。

同社の独自計測技術である、人の心理や生理状態を機器測定で計測する「心理・生理計測技術」も活用すれば、COCOMI®を用いて収集した生体情報を基に、リラックス度合いの測定によるメンタルトレーニングや眠気の検出による居眠り運転防止などへの応用が期待できます。

  • 「COCOMI®」
    (東洋紡提供)

旭化成 ~伸び縮みする電線 寿命が伸び、メンテナンスも容易~

エレクトロニクス分野はウエアラブルだけではありません。産業用ロボットの配線として繊維技術が生かされています。旭化成の伸縮電線「ロボ電®」はその一つです。産業用、介護用、さらに人間らしい動きをするヒューマノイドなどロボット産業や、ウエアラブル機器での展開を見込んでいます。

ロボットやウエアラブル機器では狭い空隙での配線が必要です。その際、たるむことなく、ストレート形状で伸縮する電線があれば様々なメリットが生まれます。それがロボ電®です。スパンデックス「ロイカ®」と繊維加工技術を組み合わせることで、開発しました。その特徴はストレート形状で伸縮するため①屈曲部の配線のたるみや絡まりが解消される、②配線スペースのコンパクト化が図れる、③屈曲に合わせた複雑な配線設計が不要となり、配線・装着が容易です。さらに柔軟性があるため、屈曲による断線寿命が従来と比べて10~100倍(使用する部位による)に向上する、生産工程での断線による稼働停止ロスやメンテナンス工数が軽減され、生産性向上が期待できるとしています。

旭化成 クラレ
~カーボンナノチューブを繊維に応用ファブリックによるヒーターやセンサー~

クラレのカーボンナノチューブ(CNT)使いの導電繊維「CNTEC®」も電気を通す繊維です。糸にCNTをコーティングしたCNTEC®は電気を通すことで発熱する”面状発熱体”になります。CNTEC®は①一本一本の糸に電気が通るため全面が発熱する、②糸の電気抵抗値、布幅、布密度の組み合わせで発熱温度を設計できる、③ニクロムなど金属線を使用したヒーターに比べて屈曲疲労性に優れる――などが特徴です。

電気毛布などに使われるニクロム線を使った商品では技術的に難しい均一発熱、低ワットという特徴を生かして融雪分野で展開しています。また、静電容量の変化を捕らえる布センサーとして、介護用ベッドのおむつセンサーとしても商品化されています。

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