日本化学繊維協会と炭素繊維協会は
2014年7月1日に統合しました

バイオ化繊の拡大に向けた取り組み

 「バイオ化繊」とは、①植物などの再生可能な有機資源(バイオマス)を原料として活用した化学繊維、②製造プロセスで微生物変換などのバイオ技術を利用した化学繊維、さらに、③生分解性を備えた化学繊維のことをいいます。
 バイオ化繊は、循環経済の促進や気候変動対策、廃棄物問題等に貢献するサステナブルな繊維素材として拡大が期待されています。
 日本化学繊維協会では、会員各社の素材開発、市場開拓、情報発信等のサポートや、環境性能の見える化を目的とした標準化などに取り組んでおり、バイオ化繊の普及・拡大を目指しています。

バイオマス原料を活用した化学繊維の拡大

 化学繊維は、石化原料を使用するものが多くありますが、循環経済への転換、気候変動対策、カーボンニュートラル対応が重要となる中、バイオマス原料を活用した化学繊維を順次拡大していきます。
 既に一部の会社は、全面的あるいは部分的にバイオマス原料を使用した化学繊維の商業生産を始めています。
 生産量の拡大や適用繊維の本格的な拡大に当たっては、食糧生産との競合や森林等の環境破壊を回避するよう食用作物の未利用部分を活用する等の手立てが重要であることから、こうした課題についてもしっかりと考えていきます。

微生物変換などのバイオ技術を利用する

 従来の化学プラントの熱化学的変換に加えて、微生物などの利用による温和な生物反応によるバイオ変換を巧みに利用した新しい繊維製造プロセスの開発が期待されています。既に一部は実用化されており、こうしたプロセスで作られた繊維素材が商品化されています。
 バイオプロセスにより生産した最終製品の品質評価、ライフサイクルアセスメント(LCA)評価手法の開発などもバイオものづくり全体に共通する基盤として重要であり、今後整備していく必要があると考えています。

生分解性繊維で環境中のゴミ問題に貢献

 環境中のプラスチック廃棄物の問題が指摘されて以降、生分解性繊維が大きく注目されています。
 生分解性繊維は、特にゴミ問題の解決に寄与する素材として期待されていますが、一方で、ポリエステル(PET)繊維などの既存繊維と比較した場合、繊維物性や耐久性の課題が指摘されることがあり、用途が限定的なことが課題とされていました。こうした点をクリアするために生分解性繊維の高性能化の開発が進められています。
 近年、海洋プラスチック問題がクローズアップして、洗濯時に脱落する繊維屑の対策や水産資材の対策として海洋生分解性繊維が注目されていますが、製品使用時の必要性能を確保しつつ、海洋に流出した際や分解が要求される時期に完全分解できるような繊維の開発も期待されています。

標準化によって環境性能を見える化する

 バイオマス原料を活用した化学繊維を拡大するには、バイオマス原料が使われていることのトレーサビリティや混率等の環境性能の表示が必要になります。例えば、バイオマス原料の混率が高い化学繊維は現状では石化原料を使った既存の繊維よりもコストが高くなりますが、混率等の環境性能を表示することによって環境性能が高い(混率等が高い)製品を求めるユーザーや消費者がそうした製品を選択できるようになります。
 化繊協会では、繊維産業、異業種産業、消費者、大学等研究機関の方々にも協力いただきながら、こうした検証や表示の仕組みづくり(JIS化)に取り組んでいます。

バイオ化繊をもっと知っていただくために

 バイオ化繊の開発など化繊協会のサステナビリティへの取り組みを広く知っていただくために、展示会等での情報発信を行っています。2004年以降、毎年エコプロダクツ展に出展しており、体験型で分かりやすい展示を目指して、学生や一般消費者の方々とのコミュニケーションの場とさせていただいています。
 化学繊維のことをよりよく知っていただき、持続可能社会実現のために様々な化学繊維で貢献できるよう、今後も取り組んでいきます。