日本化学繊維協会と炭素繊維協会は
2014年7月1日に統合しました

繊維to繊維リサイクルの拡大に向けた取り組み

 リサイクル繊維は、現在はPETボトルなどの再生原料を利用したものが中心ですが、将来的には使用後繊維製品を原料とした繊維から繊維への水平リサイクル(繊維to繊維リサイクル)に移行していくことが必要です。
 このため、日本化学繊維協会では、繊維製品の資源循環に向けたロードマップを国や関係業界と共有しながら、繊維to繊維リサイクルの拡大に向けて取り組みを進めています。

繊維to繊維リサイクルの取り組み状況

 漁網、制服作業服、自動車用部材(エアバッグ、シートベルト)などの単一素材に近い素材構成のものから、徐々に繊維to繊維リサイクルの取り組みが始まっています。ポリエステルやナイロンをはじめ、回収した繊維製品を生地のまま再使用したり、再溶融して繊維化したり、あるいは、原料のレベルまで戻して繊維化する取り組みが行われています。漁網では、閉鎖ループ型リサイクル(漁網to漁網)の事例もみられるようになっています。
 日本化学繊維協会では、こうした取り組みを拡大するため、関係業界と連携して仕組みづくりや環境整備に取り組んでいます。

繊維to繊維リサイクルの拡大に向けて

 使用後繊維製品のリサイクル拡大のためには、制度面と技術面、両方の課題を解消する必要があります。日本化学繊維協会と会員各社の対応状況をご紹介します。

1.制度面の対応

 使用後繊維製品(衣料品等)のリサイクルを拡大するには、回収・リサイクルの仕組みやコスト負担方式の構築などの課題があります。こうした課題は、1団体・1企業でクリアすることは難しく、動脈産業(繊維製造、商社、販売等)と静脈産業(回収・リサイクル産業)、国や自治体も巻き込んだ官民一体体制での取り組みが必須です。
 日本化学繊維協会は、国が主催する繊維製品の資源循環の環境整備に係る検討会に参画するなど、繊維製品の資源循環のあるべき仕組み等について積極的に意見発信を行っています。

2.技術面の対応

(1)易リサイクル繊維製品の検討

 一般の衣料品はほとんどが多素材混であり、かつ様々な染料などの加工・添加剤が使われています。このような製品をリサイクルする場合、回収品の選別や単一繊維への分離分別で大きな手間がかかり、エネルギーやコスト増につながります。5年、10年後に回収される繊維製品を想定して、繊維製品をリサイクルしやすい設計に替えていく必要があります。
 日本化学繊維協会では、化学繊維の視点で易リサイクル繊維製品の在り方を検討しています。また、繊維関連の外部機関と連携して繊維製品全体の環境配慮設計の検討にも参画しています。

(2)繊維製品の選別・分離技術開発

 回収された衣料品の選別は、現状は、リサイクル工場の作業者が製品に取り付けられた繊維組成ラベルを確認するなどして手作業で行っています。
この工程を、機械化・自動化し、さらに、衣料品の主なパーツ毎、素材毎に分離できれば、リサイクルを効率的に行えるようになります。
 こうした視点から、複数の化学繊維メーカーが共同で選別・分離技術の開発に取り組んでいます。日本化学繊維協会としても、選別をより効率的に行うために衣料品トレーサビリティ情報のデジタル化についての調査活動を行うなど、取り組みを進めています。

(3)リサイクル技術開発

 化学繊維をポリマーやモノマー等の原料に戻すリサイクル技術はこれまでに化学繊維メーカー等で開発されてきており要素技術が確立しています。しかしながら対象製品は100%単一繊維に近い製品に限られているのが現状で、今後この技術を様々な繊維が混用された衣料品に適用するには、多素材混や染料などの加工・添加剤の混入を前提とした対応が必要となります。
 日本化学繊維協会の会員企業は、ポリマーやモノマー回収における不純物除去技術や着色の防止など、従来技術のブラッシュアップに取り組んでいます。

(4)リサイクル繊維の正しい表示

 リサイクル原料やリサイクル繊維を使用した製品を拡大するには、リサイクル原料や繊維が使われていることのトレーサビリティや混率等の環境性能の表示が必要になります。
 日本化学繊維協会は、リサイクル繊維の適合基準と検証方式、統一化された表示の仕方について検討し、2023年度にJIS規格の原案を取り纏めました。今後は、さらにISO国際規格化を目指して取り組みを進めます。