日本化学繊維協会と炭素繊維協会は
2014年7月1日に統合しました

強い繊維/強くて弾性がある
パラ系アラミド繊維

パラ系アラミド繊維はスーパー繊維の代表格

高性能繊維の中で高強力・高弾性率という特徴を持つ、スーパー繊維の代表はアラミド繊維です。アラミド繊維には高強力が特徴のパラ系アラミド繊維と耐熱性などに優れるメタ系アラミド繊維がありますが、パラ系アラミド繊維は米国・デュポンと帝人が世界市場の大半を二分しています。パラ系アラミド繊維はデュポンの「Kevlar®」が1965年に世界初のスーパー繊維として開発し、日本では東レとデュポンの合弁会社である東レ・デュポンが生産販売しています。また、帝人はオランダの子会社、テイジン・アラミドで「トワロン®」、日本で「テクノーラ®」という2種類のパラ系アラミド繊維を主に生産販売しています。

  • 「Kevlar ®」安全手袋(東レ提供)
    Kevlar® は米国デュポン社の登録商標です。
  • 「トワロン®」を使用した
    光ファイバーケーブル(帝人提供)

パラ系アラミド繊維は高強度、高弾性率に加え、低クリープ性、耐切創性、振動減衰性、耐熱性、低誘電率などに優れています。省エネ・省資源、安全、環境などの世界的な意識の高まりから、パラ系アラミド繊維の需要は拡大を続けています。リーマン・ショック後の2009年には一時的に需要は落ち込みましたが、2010年からは着実に拡大基調にあり、年率7~9%成長が見込まれています。これに対応して、2社とも設備能力を拡大しています。パラ系アラミド繊維では韓国や中国企業が新規参入していますが、規模だけでなく技術開発面でも大手2社がかなり先行しています。 

世界で初めて開発されたスーパー繊維であるデュポンのパラ系アラミド繊維「Kevlar®」は、同じ重さで比較すれば鋼鉄の約5倍の強度があります。しかも伸びにくく、熱や摩擦にも強い、切創性や衝撃性にも優れ、電気を通さないなど様々の特徴を持っていました。この特徴が評価され、1971年の発売以来、幅広い産業資材用途に使われることになります。 

  • 「Kevlar®」原糸(東レ提供)
    Kevlar®は米国デュポン社の登録商標です。

光ファイバーの伸びを抑えるテンションメンバー、ロープ、タイヤなどのゴム資材、防弾チョッキや消防服や作業用手袋など防護衣料、耐熱フェルト、プリント配線基板、ブレーキパッドのような摩擦材やガスケットなどです。最大の用途は摩擦材やガスケットです。これはパルプ状(繊維をすり潰したもの)にして使われます。

パラ系アラミド繊維の歴史

1977年、「Kevlar®」と同じパラ系アラミド繊維がドイツ・アクゾによって開発されます。それが「トワロン®」です。「トワロン®」の開発によって、世界のスーパー繊維市場は2強時代がしばらく続くことになります。この「Kevlar®」「トワロン®」はスーパー繊維の第1世代と言われています。

「トワロン®」開発から10年、日本企業がこのスーパー繊維に参入します。帝人が「Kevlar®」や「トワロン®」とは異なる製法によるパラ系アラミド繊維「テクノーラ®」を独自開発し、1987年から販売を始めたのがその始まりです。日本企業が独自技術により初めてスーパー繊維を開発したという点において「テクノーラ®」の開発はエポックメイキングと言えるでしょう。

  • 「テクノーラ®」原糸(帝人提供)

帝人の「テクノーラ®」は1970年代に開発が始まり、1987年から商業生産を始めました。少し専門的になりますが、「Kevlar®」「トワロン®」は単独重合ポリマーが原料ですが、「テクノーラ®」は共重合ポリマーを使用します。また、「Kevlar®」「トワロン®」とは異なる製造工程(高温で延伸)もあります。原料、製法の違いから「Kevlar®」「トワロン®」に比べると、強度は優れますが、弾性率は若干劣ります。また、耐湿熱性や耐薬品性、耐摩耗性などに優れています。こうした特徴から「テクノーラ®」はゴム資材が主力用途となっています。

パラ系アラミド繊維は2000年以降、急成長を遂げます。世界的な環境・安全・省エネ・省資源の動きから、様々な用途で需要が拡大したからです。その成長性を見込んで帝人が動きました。帝人は2001年、オランダ・アコーディス(ドイツ・アクゾから分離)からパラ系アラミド繊維「トワロン®」事業を買収します。これにより、帝人はデュポンと並ぶパラ系アラミド繊維メーカーへと一躍、変ぼうを遂げました。帝人は「トワロン®」買収後、「トワロン®」と「テクノーラ®」の設備増強を積極的に行っています。

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