高性能繊維の中で高強力・高弾性率という特徴を持つ、スーパー繊維の代表はアラミド繊維です。アラミド繊維には高強力が特徴のパラ系アラミド繊維と耐熱性などに優れるメタ系アラミド繊維がありますが、パラ系アラミド繊維は米国・デュポンと帝人が世界市場の大半を二分しています。パラ系アラミド繊維はデュポンの「Kevlar®」が1965年に世界初のスーパー繊維として開発し、日本では東レとデュポンの合弁会社である東レ・デュポンが生産販売しています。また、帝人はオランダの子会社、テイジン・アラミドで「トワロン®」、日本で「テクノーラ®」という2種類のパラ系アラミド繊維を主に生産販売しています。
「Kevlar ®」安全手袋(東レ提供)
Kevlar® は米国デュポン社の登録商標です。「トワロン®」を使用した
光ファイバーケーブル(帝人提供)
パラ系アラミド繊維は高強度、高弾性率に加え、低クリープ性、耐切創性、振動減衰性、耐熱性、低誘電率などに優れています。省エネ・省資源、安全、環境などの世界的な意識の高まりから、パラ系アラミド繊維の需要は拡大を続けています。リーマン・ショック後の2009年には一時的に需要は落ち込みましたが、2010年からは着実に拡大基調にあり、年率7~9%成長が見込まれています。これに対応して、2社とも設備能力を拡大しています。パラ系アラミド繊維では韓国や中国企業が新規参入していますが、規模だけでなく技術開発面でも大手2社がかなり先行しています。
世界で初めて開発されたスーパー繊維であるデュポンのパラ系アラミド繊維「Kevlar®」は、同じ重さで比較すれば鋼鉄の約5倍の強度があります。しかも伸びにくく、熱や摩擦にも強い、切創性や衝撃性にも優れ、電気を通さないなど様々の特徴を持っていました。この特徴が評価され、1971年の発売以来、幅広い産業資材用途に使われることになります。
「Kevlar®」原糸(東レ提供)
Kevlar®は米国デュポン社の登録商標です。
光ファイバーの伸びを抑えるテンションメンバー、ロープ、タイヤなどのゴム資材、防弾チョッキや消防服や作業用手袋など防護衣料、耐熱フェルト、プリント配線基板、ブレーキパッドのような摩擦材やガスケットなどです。最大の用途は摩擦材やガスケットです。これはパルプ状(繊維をすり潰したもの)にして使われます。