日本化学繊維協会と炭素繊維協会は
2014年7月1日に統合しました

強い繊維/強くて弾性がある
超高分子量ポリエチレン繊維

軽量で耐摩耗性に優れた第2世代スーパー繊維

超高分子量ポリエチレン繊維は、パラ系アラミド繊維に続く第2世代のスーパー繊維に位置付けられます。ポリエチレンはレジ袋にも使われている身近な原料ですが、超高分子量ポリエチレン繊維は特殊なポリエチレンを原料にして特殊な製法によって生産されます。

この超高分子量ポリエチレン繊維はオランダのDSMと東洋紡が1984年から共同研究を開始し、事業化したものです。日本での生産は、1991年からDSMダイニーマと東洋紡の合弁会社である日本ダイニーマが行っており、東洋紡が「イザナス®」のブランドで販売しています。なお、DSMはこの繊維を「ダイニーマ®」のブランドで生産販売しています。
近年では、多数の中国メーカーも超高分子量ポリエチレン繊維の生産に乗り出しており、世界全体での生産能力は3万トン以上あると推定されています。

「イザナス®」の特徴は高強力、高弾性率に加えて軽い(比重が0.「イザナス®」の特徴は高強力、高弾性率に加えて軽い(比重が0.97と水に浮きます)、耐摩耗性、耐疲労性、衝撃吸収性や耐光性、耐薬品性などに優れる点です。吸水による劣化もなく、水に浮くほどの軽量であるため、船舶用ロープや釣り糸、防護手袋、ヘルメットなどの安全用具で採用されています。その他、土木・建築資材の補強材や高熱伝導性を生かして寝装用途での利用も拡大しています。ただ、融点が150℃と低いため、耐熱性が求められる用途には使えません。

  • 「イザナス®」原糸・製品(東洋紡提供)

東洋紡は「イザナス®」と似た特性を持ちますが、製造方法が異なる「ツヌーガ®」も販売しています。溶剤ゲル紡糸法という特殊な製法を用いる「イザナス®」に対して、「ツヌーガ®」はポリエステルやナイロンと同じ溶融紡糸法を用います。「イザナス®」に比べて強度は劣るものの、染色が可能であるなどの特徴があります。主に作業用手袋などに使われています。
2011年には帝人も超高分子量ポリエチレンの市場に参入します。「トワロン®」を生産販売するオランダのテイジン・アラミドに新設備を導入し、「ENDUMAX®」のブランドで販売を始めました。同社の超高分子量ポリエチレンは繊維状ではなく、フィルム状です。製造工程で溶剤を用いないという点も製造法が「イザナス®」とは異なりますが、用途は「イザナス®」などと同じで、防護衣料や耐切創手袋、ロープ、ネットなどです。

  • 「ENDUMAX®」(帝人提供)

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