日本化学繊維協会と炭素繊維協会は
2014年7月1日に統合しました

強い繊維/熱に強い
ナイロン(エアバッグ用途)

車の安全部品 エアバッグ

繊維=衣料品と思われがちですがそうではなく、様々なものに使われています。数ある例の1つが自動車です。鉄や樹脂などに加えて繊維も重要な材料で合繊が性能を発揮しています。カーシートやカーマットなどの自動車内装材だけでなく、エアフィルターなどのエンジン部品、そして安全部品にも繊維が使われています。乗員を衝突の衝撃から守るエアバッグがその代表例です。

  • 「エアバッグ写真」(東レ提供)

装着率高まり、装着部位広がる ~日欧米に加え、新興国にも普及~

エアバッグは普及が進み、ほとんどの自動車に標準装備されています。しかも、運転席、助手席はもちろん、横からの衝撃に対応するサイドエアバッグや横転時に対応したカーテンエアバッグなど装着部位も増えています。日欧米に加えて、中国や東南アジアなど新興国でもエアバッグ装着率が高まっており、エアバッグは繊維における非常に重要な成長分野の1つなのです。東レによると世界のエアバッグ布需要は、自動車生産台数の増加に加え、新興国でのエアバッグ装着率の高まりから、2020年までに年率約7%以上の成長が見込まれています。

基布はナイロン66織物

エアバッグにはナイロン66が原糸に使用されています。このナイロン66を織布、後加工を施したものがエアバッグ基布と呼ばれるものです。エアバッグ基布にはシリコーン樹脂をコーティングしたコーティング基布と未加工のノンコート基布があります。この基布と衝撃を感知するセンサーや衝撃時にエアバッグを膨張させるインフレ―ターからなるのがエアバッグシステムです。

ナイロン66の特性が生きる ~3社3様の事業拡大策も特徴~

なぜ、ナイロン66織物が使われているのでしょうか。それはインフレ―ターからの高温ガスなどに対する優れた性能、つまり耐熱性や高温下での強度保持性があるからです。一部ポリエステルを使うケースも新興国メーカー車にはあるようですが、ナイロン66が大勢を占めています。

世界的な需要増に伴い、日本の合繊メーカーでもエアバッグ事業に向けた拡大投資を続けています。日系企業では東レ、東洋紡、旭化成の3社がエアバッグ用ナイロン66を製造販売しています。3社ともエアバッグをナイロン66の重点分野に位置づけて事業拡大策を打っています。自動車部品は地産地消が基本です。自動車の生産台数の拡大が見込める国、地域での供給体制の整備が課題ですが、拡大策については各社ごとに違いがあります。

原糸販売を基本に事業拡大 ~旭化成~

旭化成は国内で住友商事、住江織物、中国で帝人フロンティアなどとの合弁会社に対し、エアバッグ基布の製造を技術支援していますが、基本的にナイロン66の糸売りに徹しています。

PHP(提携企業)と共にグローバル活動を更に強化 ~東洋紡~

東洋紡は原糸から基布まで一貫生産を基本としますが、提携企業との連携など臨機応変な事業拡大策に特長があります。
同社は国内でナイロン66を製造し、日本、タイでエアバッグ基布を生産販売し、中国、米国では2014年にインドラマベンチャーズと共同買収(東洋紡持株比率は20%)を発表したドイツのPHPの米国および中国子会社から現地で原糸を調達し、基布を生産販売しています。
今後PHPグループと共にグローバルでのエアバッグ基布需要の拡大に対応していきます。

糸から基布まで一貫で海外を増強 ~東レ~

東レはナイロン66原糸にから基布までの一貫生産により海外でのエアバッグ布事業を拡大しています。同社はナイロン66原糸を日本の岡崎工場(愛知県岡崎市)とタイ子会社、タイ・トーレ・シンセティクス(TTS)で生産しています。
原糸に加えて、織布・加工を日本はもちろん、タイ、中国、欧州(チェコ)で行っており、グローバルな供給・販売ネットワークをしいています。今後は、需要増加に応じて織布能力を順次拡大するほか、今後需要が伸びてくる新興国においての供給体制も視野に入れ、さらなる事業拡大を図っていく方針です。

  • 「TTS社のアユタヤ工場」(東レ提供)

本文および写真の無断転載はお断りします。