日本化学繊維協会と炭素繊維協会は
2014年7月1日に統合しました

化学繊維の用語集

QR(クイック・レスポンス)/SCM(サプライチェーン・マネージメント)

1980年代半ば、衣料品の輸入急増に直面した米国の繊維産業は、国際競争力回復を目指して、様々なプログラムを開始しました。当時、米国のコンサルティング会社のKSA(Kurt Salmon Associates)社は、アパレル企業の競争力をいかに強化するかの観点から、衣類のサプライ・チェーンの分析を行いました。
その結果、第一に、原材料の手当てから店頭で消費者が衣料品を購入するまでのサプライ・チェーンにおいて平均66週間を要していますが、このうち製造や加工に費やされた期間は、わずか11週間であったのに対し、残り55週間が倉庫在庫と輸送(繊維~紡織~縫製~小売)の期間であったこと、第二に、この長いリードタイムのため、見込み生産を余儀なくされ、3つのロス(売れ残り、見切り=マークダウン、欠品=機会損失)が発生し、ロスの総計が全売上の26%に達していること、第三に、その結果、売り場からの発注に即応した生産を行う等、アパレル生産の従来の仕組みを劇的に変えた場合、理論的には、現状の66週を21週程度にまで圧縮が可能であると、結論付けました。
このように、サプライチェーン全体にわたって存在する時間とモノの無駄を、消費者の利益の観点から排除していくこと、主にリードタイムの短縮および在庫削減がQRの考え方です。これを実現するには以下の様な取り組みが必要です。

・製造業と流通業との間、サプライチェーン上の企業間での情報共有(このためには、パートナーシップ=信頼関係の確立が必要)
・情報共有の手段としての情報ネットワークの利用 (情報システムの基本的部分の標準化、JANコード、標準EDI等)
・企業間の最適なビジネスプロセスをゼロベースでの設計(BPRの導入)
日本においては、1994年9月にQR推進協議会(2002年6月より、「繊維ファッションSCM推進協議会」へ略称変更)が発足し、本格的なQRの取り組みが開始されてきました。ただ、これまでのQRの取り組みは、発注側の在庫リスクを加工部門にしわ寄せする、いわゆる「QRとは、『顧客にすぐに届けること』」と解釈されかねない反省から、SCM(サプライチェーンマネージメント)の言葉も使われています。
SCMにおいては、より川上部門の素材産業をまき込んだ協働を意識し、情報共有に力点がおかれていますが、QRもSCMも目的とするところは基本的に変わっていません。

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