日本化学繊維協会と炭素繊維協会は
2014年7月1日に統合しました

便利な繊維/冬を快適にする機能
羽毛代替

かさ高性や保温性に優れる羽毛

天然素材である羽毛は、ふとんやダウンジャケットに主に使われています。羽毛はグースやダックなど水鳥の羽根で、体表に生えているダウンと、それを覆うように生えているフェザーに分かれます。羽毛の特長には①保温性が高い②軽い③かさ高性④吸放湿性がある―といった点があり、ふとん用詰めわたなどで高い評価を得ています。

羽毛不足で価格が高止まり

その羽毛の需給バランスがここ数年崩れています。生産量が減少し、逆に需要は伸びている状態です。そのため、羽毛価格が大きく上昇し、価格が高止まりの状況が長く続いています。
その背景には、2008年のリーマン・ショックがあります。羽毛価格が暴落し、2009年6月には1キロ当たり10ドルまで下がり、先行きの不透明さから世界の羽毛の3分の1以上が処分されました。同年11月には25ドルに回復しましたが、需給バランスが乱れるきっかけになりました。
さらに食用肉に対する市場からの価格要求が11年に一段と強まった点も大きな影響があります。価格要求に対応するため、飼育日数を短縮する方向に進みましたが、その結果、肉の味が落ちたことで食肉需要が低下しました。食肉販売の減少に比例して食用飼育の副産物である羽毛も減少するという負のスパイラルに陥りました。そして鳥インフルエンザが起こるたびにその流れが加速しています。
使用済み羽毛を再生させてリサイクルダウンとして再利用する動きも進んでいますが、需給バランスを改善するには長い時間が必要とされました。

羽毛代替素材に熱視線

長期的な羽毛供給も不透明なことから、熱い視線が注がれているのが、化合繊中わたです。羽毛に代わる素材として、一躍脚光を浴びて開発競争が加速しています。ポリエステル短繊維をはじめ、キュプラ繊維、ポリトリメチレン・テレフタレート(PTT)繊維、アクリル短繊維など、多様な素材が提案されており、どこまでダウンウエアや羽毛ふとん市場に浸透するかが注目されます。

吸湿時に吸着熱を発生
~東洋紡「モイスケア」~

東洋紡が展開するアクリレート100%素材「モイスケア」は調湿作用に優れています。綿やナイロンの約7倍という高い吸湿性を備え、吸湿時には吸着熱を発生します。その発熱性はウールの約3倍に達する、快適な暖か素材です。

  • 「モイスケア」(東洋紡提供)

羽毛のような柔らかな触感
~東レ「エフティドリームサーモ」~

東レの「エフティドリームサーモ」は保温性を持ったポリエステル中わたです。繊度と断面形状が異なる複数の原綿をブレンドした中わたで、空気層を効率的に保持することで優れた保温性を発揮します。羽毛のような柔らかな触感を持つことも特長で、軽量性やかさ高性がありながら弾力もあり、回復性に優れています。

  • 「エフティドリームサーモ」原綿
  • 「エフティドリームサーモ」を使用した寝具
    (東レ提供)

ポリエステルと改質アクリルをラインアップ
~帝人グループ「エアロトップ」「サンバーナー」など~

帝人は繊維に空洞を作って大量の空気を封じ込める軽量・保温素材「エアロトップ」や保温性と洗濯耐久性に優れた「フワリーヌ」といったポリエステル素材のほか、ポリトリメチレン・テレフタレート(PTT)繊維「ソロテックス」を使った「ソロテックス3.3」を保有しています。PTT繊維の分子構造はばねのようにらせん状に結合しているため、柔らかく、軽やかに伸び、形態回復性も持っています。

  • 「エアロトップ断面」(帝人提供)

グループ会社の帝人フロンティアもポリエステル繊維「オプトマックス」を販売し、東邦テキスタイルはアクリレート系繊維「サンバーナー」を展開しています。「オプトマックス」は、体から発生する水蒸気を吸収し、熱に変換する吸湿発熱不織布です。特殊な製法で薄く、軽く、ソフトな風合いを実現しています。また「オプトマックスECO」は、再生ポリエステルを使用しており、環境に優しい素材でもあります。

  • 「オプトマックスの吸湿発熱メカニズム」(帝人提供)

「サンバーナー」は独自技術による改質アクリルで、吸湿発熱機能を持たせた「アクリレート系繊維(指定外繊維)」です。ウールの約3倍に及ぶ発熱量とアンモニアに対する消臭機能、快適性につながる吸水性など多くの機能を持っています。

ダウンライク詰めわた
~三菱ケミカル「パフウォーム」~

三菱ケミカルが展開する「パフウォーム」はアクリル素材です。アクリルならではのかさ高性、保温性を生かした軽量感や暖かさといった特長を持つダウンライクの詰めわたです。

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