衛生害虫はたくさんいるのですが、代表的と言えるのが蚊です。マラリアはハマダラカが、デング熱はヒトスジシマカなどが媒介すると言われています。日本ではコガタアカイエカが日本脳炎を媒介するとして知られています。そのほかにもヒトノミは人の血を吸い、ペストはネズミノミを介して感染します。このように衛生害虫は私たちの身の周りにたくさんいると言ってもよいでしょう。
マラリアやデング熱などは、暑い国や地域特有の病気だと思われがちですが、2014年の夏にデング熱の国内での感染例が確認されました。69年ぶりのことだそうです。東京都などの首都圏を中心に150を超える例が報告されたと言います。
日本はどんどん暑くなり、亜熱帯化していると言われています。日本の寒さには耐えられないと予想されていたセカカゴケグモが越冬した例もあります。昔から日本にいる衛生害虫だけでなく、気温の上昇で外国の衛生害虫も日本にどんどん入り、定着の様相を呈しています。最近はアウトドアやキャンプ、園芸など外で活動する機会もどんどん増えており、しっかりとした防虫対策が重要です。スプレーなどが中心になっていますが、化学繊維でも防虫素材が活躍しています。
ここでは防虫素材を紹介します。
帝人フロンティアも多くの防虫対策素材を持っています。「スコーロン®」は、製薬会社のアース製薬が開発した揮散しない防虫剤と帝人グループの接着技術によって洗濯耐久性を飛躍的に高めた防虫素材です。スポーツやアウトドアウエアが用途になります。寝具中わたに使われる「マイティトップ®Ⅱ」はダニを寄せ付けにくく、また優れた抗菌防臭効果で細菌の増殖を抑え、防臭効果を発揮します。「ミクロガード®」は極細繊維を高密度に織り上げて繊維の隙間を緻密にしています。これによってダニはもちろん、ダニのふんや死骸、ホコリなど、アレルギーを引き起こす物質をしっかりと遮断します。長繊維を使用しているので、布団の上げ下ろしや寝返りで出るホコリの発生も防ぎます。寝具側地で使われています。
- 「スコーロン®」断面(帝人フロンティア提供)
東レの「ウィズリリーフ®」は独自の微細加工技術により高い防虫機能と安全性を両立した防虫テキスタイルです。防虫機能を持つ多層構造の立体的な被膜を、テキスタイル表面に一体化させる微細加工によって機能が長続きします。肌への刺激を考慮した防虫加工を施しているため、子供が日常的に直接触れるシーンなどでも使用することができます。ポリエステル高混率混から綿混素材まで幅広い対応が可能です。この素材を使った衣料品はさまざまなところで活躍します。例えば外で働く人のウエア(農業や林業、建設業、配送業など)やアウトドア・スポーツウエア(登山、ランニング向け)、学生服、子供服などが上げられます。そのほか、カーテンや寝具類などいろいろなシーンで用いられます。
三菱ケミカルは、防虫機能素材「クリーンライフ® Neo」を販売しています。ポリプロピレンマルチフィラメントの繊維中に安全性が高いとされる防虫忌避剤(ピレスロイド様化合物)を練り込んでいます。忌避が持続することが大きな特徴で、気化しないため臭いもほとんど出ないと言います。車輌用スクリーンネットを皮切りに、アウトドア用途や農業ハウス用ネット、カーペットなど幅広い用途への販路拡大が進められています。
ユニチカトレーディングの「パラール®」は、繊維にマイクロカプセルを固着した特殊加工を施すことで、飛来する虫が嫌がって寄り付きにくい、逃げやすいという効果があります。後加工のため、さまざまな素材に対応できることも特徴になっています。
(2019年2月掲載) 本文および写真・図(イラスト)の無断転載を禁じます。