日本化学繊維協会と炭素繊維協会は
2014年7月1日に統合しました

便利な繊維/夏を快適にする機能
通気コントロール素材

夏。テレビやインターネットで流れているニュース、周りの大人の声をよく聴いてみてください。「今年の夏は特に暑い」「毎年、暑くなっている」「異常気象」といった言葉が出てくると思います。実際に以前と比べて暑くなっている気がします。最高気温が25℃を超えると夏日、30℃で真夏日、35℃になると猛暑日と呼ばれているのですが、4月や5月に夏日、真夏日になることもあり、夏本番の8月には猛暑日になる日も珍しくなくなってきました。そのような日は熱中症にかかってしまうこともあるので、皆さんもくれぐれも気を付けてください。

暑さ対策機能に一つ

化学繊維メーカーは、こうした暑さに対応するための機能を持つさまざまな素材を開発してきました。代表的な素材で言うと、吸汗速乾機能でしょうか。その言葉の通り、汗(水分)を素早く吸って、早く乾くという機能を持っています。コットン製の肌着・Tシャツを着たことがあると思います。コットンは、水分をよく吸うのですが、乾くのが遅く、べたべたしてしまいます。化学繊維の吸汗速乾素材はそれらを解消しているのが特徴的と言えます。そのほかにも、触ると冷たく感じる素材(接触冷感)などがありますが、高通気素材も暑さ対策には欠かせない素材です。空気をよく通すため、本当に涼しく感じるのです。高通気素材はさまざまな製品が販売されています。

通気をコントロール

通気性を持った素材の中でも面白いのが、暑さや寒さに応じて通気度を制御する素材が登場していることです。暑い日に外に出ていたり、運動をしたりしていると汗をかきます。そのような時は高い通気性が求められますが、運動をやめたり、日陰に入ったりすると少し寒くなる時があります。その時は、あまり通気性は必要ありませんね。暑いときは空気の通りを良くし、そうでないときはあまり通らないようにする。それが通気コントロール素材です。こちらもいろいろな場面で活躍しています。
今回は活躍する化学繊維では高通気・通気コントロール素材を紹介します。

中わたの吹き出しを軽減
~旭化成「レオフィール®」~

旭化成の「レオフィール®」はテキスタイル技術と高機能コーティング加工により、耐水性、透湿ともに高いレベルを実現したハイスペック素材シリーズです。激しい運動や厳しい気象条件下でも着用時の蒸れ感を抑制します。通気性を抑えることで、ダウンや中わたの吹き出しを軽減します。

  • 「レオフィール®」断面(ポリウレタン加工)
    (旭化成提供)
  • 「レオフィール®」断面(アクリル加工)
    (旭化成提供)

特殊扁平断面糸を使って機能性を
~クラレグループ「ブリーズライト®」など~

クラレグループのクラレトレーディングが展開する「ブリーズライト®」は、特殊扁平断面糸により生地に高通気とドライ感を付与した素材です。繊維断面を、繊維間空隙を大きくするために最適な扁平率のドッグボーン形状にしているほか、糸加工によってスパイラル構造にすることで通気性を高めているのが特徴です。「サラベール®」は、ポリエステル糸に特殊仮撚りを施して凹凸感を付与した繊維で、ドライ感がある風合いを持っています。高通気のほか、吸汗速乾性が特徴の清涼素材です。

デジタルプロダクションシステム使った素材も
~セーレン「エアリークール®」など~

セーレングループはたくさんの高通気・通気コントロール素材を取りそろえていますが、「エアリークール®」がその一つです。特殊組織で風が通りやすいホールを多数配置させた構造の素材です。外気を多く取り入れ、着用時に体から発生した熱や湿気を排気することでクーリング効果が得られます。「ビスコマジック®」のデザインシステムにより多彩な通気コントロールレイアウトが可能な特殊加工素材で、ツーウエーのパワーも付与できます。高通気、高強度、軽量性のダブルラッセル素材「スペースファブリック®」はビスコテックスと組み合わせることで、優れた意匠性が表現できるので、ウエアからギアまで幅広い展開が可能です。そのほか、経編み技術による多彩な意匠表現と通気コントロールレイアウト、ツーウエーパワコントロールが作れる「プリモーディアル®」などを展開しています。

軽さや軽量性に優れる生地も
~帝人グループ「エアーインプレッション®」~

帝人グループの帝人フロンティアが販売しているのが、「エアーインプレッション®」です。特殊な粗密度織物構造によって高い通気性を実現しています。汗を吸った時の水拡散性が良く、乾燥が早いのが特徴です。含水量高いほか、表面に微細な凹凸を持っているため、汗を多くかいたときでもべたつきにくいという優れた点も持っています。

長く愛されるロングセラー素材
~東レ「ドットエア®」など~

東レの「ドットエア®」は、特殊原糸と織物構造をベースに独自の加工技術を駆使して通気孔を発現させた、空気がよく通る快適機能素材です。猛暑対策素材としても注目を集めていて、販売も伸びていると言います。特殊な編み組織によって、高通気(200CC以上)と、UPF(紫外線保護指数)30という、相反する機能を両立した「エアロリード®」も販売しています。

  • 「ドットエア®」生地表面イメージ(東レ提供)

衣服内の気流をコントロール
~東洋紡グループ「ソニックエアー®」「スペクター®」

東洋紡グループの東洋紡STCは、メッシュ構造の適正化によって衣服内の空気を動かしてクーリング効果を得るニット素材「ソニックエアー®」を提案しています。運動時に涼しく感じるほか、吸水速乾性にも優れているので、スポーツ用途などで最適ですね。屋外スポーツ向けのニット素材では「スペクター®」もラインアップしています。高捲縮(けんしゅく)加工糸と緻密な編み構造で防風性を高め、また撥水性(はっすい)性にも優れています。

編み目が開いて閉じるエアコン型機能素材
~三菱ケミカル「ベントクール®」~

三菱ケミカルホールディングスグループである三菱ケミカルは、「ベントクール®」を販売しています。人体からの汗に反応して、原糸が可逆的に伸長し、編み目を広げ、通気性を向上させます。発汗後は編み目が閉じるエアコン型の機能素材です。インナーやスポーツ、ユニフォームなどを用途に提案していますが、顧客の要望に応じて、原糸や生地で販売しています。

  • 「ベントクール®」断面(三菱ケミカル提供)

風合いを損なわず通気性も
~ユニチカグループ「スプラッシュ・エアー®」など~

ユニチカグループのユニチカトレーディングがスポーツウエアやユニフォーム用途で提案している「スプラッシュ・エアー®」は、メッシュ調の織・編み物による通気性素材の高耐久撥水(はっすい)加工です。生地表面を覆ってしまうラミネートやコーティング加工とは違い、繊維自体に加工するので生地本来の風合いは損ないません。通気性のほか、洗濯耐久性に優れているのも特徴です。「フリーダム®」は、ファブリケーションによる高通気で、空気の流れをコントロールして衣服内の放熱を促します。プラスアルファ(撥水<はっすい>や遮熱、クーリングなど)の相反する機能を付け加えることも可能です。用途はスポーツウエアやユニフォームが中心になります。

(2020年9月掲載) 本文および写真・図(イラスト)の無断転載を禁じます。