日本化学繊維協会と炭素繊維協会は
2014年7月1日に統合しました

便利な繊維/特殊な機能
撥水・撥油・防汚

加工剤、生地構造の工夫で汚れから守る快適衣料

撥水・撥油・防汚機能は、水や油を弾いて衣服の汚れを防いだり落ちやすくしたりする機能です。建設・土木、製造現場で着用する作業着(ワーキングウェア)には従来から欠かせない機能であることに加え、梅雨~秋にかけて急な豪雨に見舞われることも多くなった昨今では、この機能を備えた多くの商品が販売されるようになりました。しかも、自然環境や人体への影響をゼロにするため、環境配慮型の加工剤や生地構造の工夫で機能を発揮させる新しい開発素材に各社が力を入れているのです。

機能に優れたフッ素系加工剤

撥水・撥油・防汚機能にフッ素系加工剤は欠かせません。フッ素が水、油を弾く性質を持っているからです。フッ素化合物は他の化合物との分子間引力が極めて弱い、言い換えると、モノをくっつけにくい性質があります。これを繊維に加工すると水や油をはじく機能を持たせることができるのです。
「液体をはじく」という性質は固体表面の表面張力が液体の表面張力より低い時に発現します。フッ素系加工剤は原料となる化合物にパーフルオロアルキル基(Rf基)という構造を持っています。Rf基は表面張力が最も低い物質で、これを表面に加工した個体は水、コーヒー、ミルクなどの水溶液だけでなく、油、アルコール、ガソリンといった高い浸透性を持つ液体もはじくことができ、耐久性にも優れています。

PFOAフリー、フッ素フリーへ

ワックスやシリコン系加工剤に比べ、ワンランク上の機能を持つフッ素系加工剤ですが、ごくわずかに含まれるPFOA(パーフルオロオクタン酸)という物質について、地球環境や人体に影響を与える懸念が2000年頃から取り沙汰されるようになりました。従来のフッ素系加工剤は、炭素数が8個以上のC8テロマー(Rf基の構造を有する化合物)を原料としており、これにごく微量のPFOAが不純物として含まれているのです。
人体への危険度は確定していませんが、2006年に米環境省がPFOAの排出と製品含有を2015年までに廃絶しようと、世界のフッ素樹脂メーカーに呼びかけました。これを受けて、C8タイプを使わない撥水撥油製品が世界的に求められるようになり、合繊メーカー各社も従来のフッ素系加工剤を使用せず、PFOAを含まない炭素数が6個のC6タイプの加工剤、フッ素を使わない非フッ素系加工剤など「PFOAフリー」「フッ素フリー」の撥水・撥油・防汚素材の開発に力を入れているのです。特殊な原糸や生地構造の工夫、ナノ技術などを組み合わせて、従来の加工剤と同等の機能を目指す取り組みも見られます。

耐久撥水を提案 ~セーレン「ポールレン®SF」「ポールレン®FF」~

セーレンは環境・安全性に配慮し、PFOAを完全に排除した耐久撥水素材「ポールレン®SF」、フッ素を含まない「ポールレン®FF」を展開しています。スポーツ衣料向けだけでなく、衣料全般、繊維資材にも採用されています。

  • 「ポールレン®FF」の化学構造イメージ図
    (セーレン提供)

快適性も重視 ~帝人フロンティア「ダストップ®」シリーズ~

帝人フロンティアはポリエステル素材の「ダストップ®」を「ダストップ®Ⅱ」「ダストップ®21」「ダストップ®SP」のシリーズでそろえています。ダストップ®Ⅱは油汚れをはじくとともに、付着しにくくする特徴もあります。また、洗濯時には親水成分も機能し、油汚れを落ちやすくします。洗濯を繰り返しても高レベルの撥水撥油性能を発揮し、ユニフォーム用途に使われます。
ダストップ®21は加工で風合いが硬化するデメリットを解消した撥水撥油防汚加工素材です。撥水撥油機能だけでなく防汚性能も備え、また風合いもやわらかいのでファッション衣料にも適します。
ダストップ®SPは撥油性能と吸汗速乾性を両立した素材です。繊維の表面に強力な撥油性被膜を形成しつつ、水分を選択的に吸収し、親水層へ拡散することができます。やわらかい風合いと洗濯耐久性も実現しており、ユニフォーム、スポーツのほかシーツやテーブルクロスなど幅広い用途に対応します。

  • 「ダストップ®SP」の防汚メカニズム(帝人提供)
  • 「ダストップ®SP」の撥水・撥油実験
  • 「ダストップ®SP」断面(帝人提供)

耐久撥水性ナイロン素材、防汚性と吸水性を両立させた防汚加工
~東洋紡STC「ナノピカ®」~

「ナノピカ®」はユニフォームに展開しています。防汚機能を付与した素材の多くは通常、撥水・撥油加工を施し、汚れや油を生地表面で弾くようにしています。このため、汚れが繊維内部に染み込みにくいのですが、一方で防汚加工を施した生地は吸水性が低下し、汗をかいた時に衣服内が蒸れる、洗濯時も水を吸いにくいため洗剤が繊維の隅々まで行きわたらないなどの悩みもありました。
「ナノピカ®」はナノレベルの薬剤を用いることでその悩みを解決し、防汚性と吸水性を高いレベルで両立しています。襟部分の汗染みが目立たなくなることから、ワーキングウェアや白衣などのユニフォーム関連だけでなく、ビジネスシャツなどの用途にも多く使われています。

「ナノピカ®の防汚性/防水性/撥油性の比較データ」
(東洋紡提供)

撥水と防汚を追求 ~東レ「キューダス®」「テクノクリーン®」~

東レはポリエステル素材「キューダス®」「テクノクリーン®」をそろえています。特殊な撥水技術を用いるキューダス®は、耐久撥水性を高めており、長時間雨に打たれても生地の表面に水の被膜ができません。また洗濯20回後でも性能が劣化せず、優れた耐久性を持っています。ユニフォームのほか、スキー、アウトドアなどスポーツウエアに使われます。

  • 「キューダス®」の耐洗濯性能比較
    (東レ提供)

テクノクリーン®は汚れ付着防止と洗濯での汚れ除去性を兼ね備えます。PFOAフリーであるほか、洗濯時間の短縮、使用する水や洗剤の量の削減など環境低負荷に貢献します。防汚加工剤を構成するポリマーの疎水性成分と親水性成分の混合バランスをナノレベルで制御した新規の加工剤を設計している点にポイントがあります。

  • 「テクノクリーン®」のポリマー構造
    (東レ提供)
  • 「テクノクリーン®」を使用した学生服ジャケット
    (東レ提供)

ナノテク、特殊加工糸を駆使 ~ユニチカトレーディング「タクティーム®」~

ユニチカトレーディングはナノ技術や特殊な加工糸でPFOAフリーの撥水撥油素材を提案しています。タクティーム®は独自の特殊加工糸を使い、生地表面に微細な凹凸構造を作ることで、水滴との接触面積を減少させ、水滴に高い転がり性を持たせて耐久撥水性を発揮します。洗濯による水滴ころがり性能の低下も抑えており、スポーツ、ユニフォームだけでなく一般衣料にも提案しています。

<性能> 長時間スプレー法(JIS 1092 スプレー試験を応用)による評価

  • 「タクティーム®」の撥水実験
    (ユニチカ提供)

本文および写真の無断転載はお断りします。