日本化学繊維協会と炭素繊維協会は
2014年7月1日に統合しました

便利な繊維/清潔に保つ機能
静電ろ材

昔の人たちに比べると、現代社会に住む私たちは本当に便利で快適な生活を過ごしています。これは産業の発展がもたらしたものだと言え、世界では産業革命と呼ばれた時代があり、日本にも高度成長期と呼ばれた時期がありました。さまざまな産業が発展し、国、そして私たち国民の生活は豊かになりました。その一方で、排気ガスや汚れた水によって公害問題が起こったのも事実です。

世界では空気や川が汚れている場所もあります

公害がひどいときは、日本でも都会の川には魚が住めなくなったり、肺の病気になったりした人がいたようです。公害への対策は日本でも進み、今では皆さんが住んでいる地域の川や空気はすごく綺麗になっているのではないでしょうか。

ですが、世界に目を向けてみると、産業や経済がものすごいスピードで発達していると同時に空気の汚染や河川の汚染が進んでいる国・地域も存在します。また、電気自動車やハイブリッド自動車の数が増えてきているのですが、まだまだガソリン自動車の数が多いのも実情です。世界的に見ると、工場や自動車の排ガスによる大気汚染問題は解決されているとは言えません。

最近では温室効果ガスによる地球温暖化も大きな問題として取り上げられる機会が増えてきたように感じます。

空気を綺麗にするためのフィルター

日本だけでなく、世界中の国々の人たちが綺麗な空気や水を求めるようになっています。SDGs(持続可能な開発目標)やサステナビリティ(持続可能性)という言葉をテレビやインターネット、学校の授業で聞いたことはありませんか。これらは地球環境を大事にしようとする大きな動きです。この動きは止まることがないと言われ、これからもっともっと重要視されてくると思います。

地球環境保全に役立つものはいろいろなものがあり、さまざまな方法で使われています。その一つが静電ろ材(エレクトレットフィルター)と呼ばれているものです。エアフィルターとして用いられ、粉じんや不純物などを取り除いて空気を綺麗にします。あまりイメージがわかない人は、おうちにあるような空気清浄機を思い浮かべると分かりやすいかもしれません。自動車のエアコンのフィルターにも使われているのですよ。
フィルターには織っていない布である不織布が使われることも多いのですが、不織布メーカーだけでなく、化学繊維メーカーも販売しています。日本の化学繊維メーカーの全てが静電ろ材を展開しているわけではありませんが、高い性能を持つと高い評価を獲得するに至っています。

不織布製マスクにも使われています

皆さんがよく知っているマスクにも使われています。インフルエンザや風邪、花粉症でマスクを着けている人はたくさんいますが、新型コロナウイルスの感染拡大でマスクを着用する人がすごく増えましたね。布マスクにはフィルターが付けられていないこともありますが、ドラッグストアやコンビニエンスストア、スーパーマーケットなどで売られている使い捨ての不織布マスクにはフィルターが使われています。空気を綺麗にするだけでなく、ウイルスや花粉などから皆さんを守る役割も果たしています。あまり知られることがない静電ろ材ですが、実は皆さんにとって、すごく身近なところで活躍しているのです。
今回は活躍する化学繊維では静電ろ材を紹介します。

幅広い、ろ材をラインアップ
~東洋紡「エリトロン®R」など~

東洋紡が販売している「エリトロン®R」は、ポリプロピレンとポリエステル短繊維のニードルパンチ不織布をベースとした帯電ろ材です。かさ高構造でかつ高い帯電密度という特徴を持っています。低圧力損失でダスト保持能力が大きいという利点を生かし、自動車キャビンフィルターやマスク、空気清浄機フィルターなどに適用されています。

「エリトロン®X」はポリプロピレンメルトブローン不織布をベースにした高帯電密度かつ耐熱電荷安定性を持っているろ材です。微細塵の捕集効率が高く、高性能マスクや空気清浄機フィルターなどに適用されることが多いろ材です。

「エリトロン®Z」は、「エリトロン®X」をベースに耐油性を付与したろ材です。帯電ろ材の弱点だった油粒子の負荷による帯電量低下を低減することで、従来に比べて捕集効率の劣化を抑制できるのが特徴です。空気清浄機フィルターでは、たばこ煙負荷時の寿命向上に効果があると言われています。

マスクや自動車用エアコンフィルターなど
~東レ「トレミクロン®」~

東レは「トレミクロン®」を販売しています。ポリプロピレン製極細繊維不織布を、特殊な帯電方法でエレクトレット(電石)化した高性能不織布シートです。静電気の力でサブミクロン単位の微粒子をキャッチし、高い捕集効率と低圧力損失を両立した空気清浄フィルターが一押しの用途なのですが、各種の高性能脱臭剤、抗菌・防カビなどの機能付与を組み合わせた高機能フィルターを設計することが可能なのが強みだと言います。現在は、マスクや空気清浄機、自動車用エアコンフィルター用途など幅広く展開されています。今後は高性能フィルター分野をターゲットに、これまで以上に高性能な製品の開発とグルーバルな販売・供給体制を作ると話しています。

  • 「トレミクロン®」拡大画像(左画像1点)、「トレミクロン®」と従来繊維の集塵性能比較(右画像2点)
    (東レ提供)

(2020年9月掲載) 本文および写真・図(イラスト)の無断転載を禁じます。